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【正木利和のスポカル】2000年後には、ルノワールの絵画もこんなに朽ち果ててしまう…1層100年の時を積み重ねて作った絵

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【正木利和のスポカル】
2000年後には、ルノワールの絵画もこんなに朽ち果ててしまう…1層100年の時を積み重ねて作った絵

柴川敏之「出現II40041121(2000年後に発掘された絵画の出土品:ルノワール)」(個人蔵) 柴川敏之「出現II40041121(2000年後に発掘された絵画の出土品:ルノワール)」(個人蔵)

 柴川は広島大学大学院を修了、現在は岡山・就実短大の教授を務めながら、作品を発表し続けている。

 20年以上も前に、広島県福山市の芦田川沿いを自転車で走っていて、「草戸千軒」の遺跡発掘現場を通りかかったとき、「ここには昔、洪水で沈んだ町があったんですよ」といわれ、「2000年後」をテーマとして考えるようになったのだという。

 「わたしは1966年生まれですが、小さなころは、西暦2000年になったら漫画の鉄腕アトムなんかで描かれている、すごい世界になるんじゃないかな、と思っていました。でも、実際になってみるとあまり変わってない…」

 1997年には文部省(現・文部科学省)から研究員としてイタリアに派遣され、今度は火山爆発によって埋もれた、ナポリにほど近い古代都市、ポンペイの遺跡を見た。

 「案外、昔の人の暮らしもいまの世界と変わってないなあと。選挙のポスターがあったり、売春婦もいたりして…」

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 「2000年後」を、創作のなかに取り入れようと考えたのは「教育」のためだという。「小さな子供たちに、10年、20年よりももっと遠いスパンでの視点を教えることが大事なんじゃないかと思った」

 10年ほどは、耐火レンガを積みあげたりしながら「2000年後」をテーマにした「発掘現場」を作ったりしたそうだ。

 2003年からは携帯電話、メトロノームなどの2000年後の「出土品」も制作しはじめた。当然ながら、この絵画も出土品としてつくられた。、キャンバスはもちろん、額縁も徹底した「古色」がほどこされている。

 「溶岩やサンゴ、鉄さびなどを粉にして顔料を作り、卵やニカワなどをつかって接着します。1層を100年にみたて、20層塗り重ねるため、ひとつの作品を作るのに半年から1年がかり」と柴川。

 そうやってルールをつくり、時間をかけて丹念に作り込んで行く。

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 「2000年後の人が美術館の収蔵庫でこの額縁を見つけたら、お盆だったと思うかもしれません。キューピー人形も仏像に勘違いされたりして。そう考えたら、いまの東京国立博物館の収蔵品も2~3割は勘違いの説明がなされてるんじゃないか、とも思います」

 時間は、苦しい過去を癒やす能力をもつ半面、未来へ向かって死への道のりをカウントする非情さも持ち合わせている。そして、さらにもっとどんどん積み重なってゆけば、「歴史」というロマンを未来へ送る役割も果たす。

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