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【理研が語る】生存競争に敗れた“負け組”の大逆転劇-「iPS細胞で腎臓を作る」研究から考える多様性の大切さ

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【理研が語る】
生存競争に敗れた“負け組”の大逆転劇-「iPS細胞で腎臓を作る」研究から考える多様性の大切さ

一つの研究成果は無数の基礎研究の蓄積から生まれる 一つの研究成果は無数の基礎研究の蓄積から生まれる

 大学院で腎臓の発生学を学んだ私は、オーストラリアへ留学し、あらゆる臓器へ分化する能力があるとされているヒト人工多能性幹細胞(iPS細胞)から腎臓組織を作った。再生医療研究と呼ばれる、今まさにはやりの研究分野である。

 iPS細胞から腎臓を作るには、胎児の中でどのように腎臓が形作られるのかを理解しなければならない。「個体発生は系統発生を反復する」とドイツの生物学者ヘッケルが言ったように、受精卵が成体になるまでの過程では、その生物の進化の痕跡を観察することができる。腎臓の発生を突き詰めれば、最後には腎臓という臓器がいつ出現したのかという問いに行き着くのだ。生命の歴史上、最初にそれを獲得したのは、現在の魚類の祖先の硬骨魚類である。

 今から約4億年前のデボン紀、海の生物たちが繁栄を極めていた時代に、硬骨魚類は海での生存競争に敗れ、河や湿地に追いやられていた。いわゆる負け組である。しかしこれが、その後の大逆転劇につながる。

 きっかけはデボン紀末期の急激な乾燥化と海中酸素濃度の低下だった。当時海の王者であった魚類のほとんどは絶滅したが、硬骨魚類は淡水で生きるための腎臓や浅瀬で生きるための肺など新しい器官を獲得していたことが功を奏し、急激な環境変化を生き残ることができたのだ。あるものは再び海へと戻って現在の魚類となり、またあるものは両生類となって陸上へと進出し、われわれ人類を含む地上動物の祖先となった。

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