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【理研が語る】光る生物の“匠”がもたらす新技術 遺伝子やがん…生命のナゾに迫る

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【理研が語る】
光る生物の“匠”がもたらす新技術 遺伝子やがん…生命のナゾに迫る

ナノ・ランタンを発現する大腸菌を筆につけて「光」と描き、培養した様子 ナノ・ランタンを発現する大腸菌を筆につけて「光」と描き、培養した様子

 以前学会で訪れた長崎で夜景を見た際、夜を照らす色とりどりの明るい光に感動を覚えるとともに、人々の生命活動の営みを感じた。

 しかし、人類が電灯やLEDを開発する以前から、威嚇や求愛などの生命活動のために闇を照らす生物がいる。下村脩博士がノーベル化学賞を受賞して一躍有名となったオワンクラゲやホタルなどの発光生物である。受賞理由は緑色蛍光タンパク質(GFP)の発見・応用であるが、実際にオワンクラゲが光る原因は、下村博士が発見したイクオリンという別の青く光るタンパク質である。

 イクオリンなどの発光タンパク質(自ら光を発するタンパク質)からのエネルギーが、GFPなどの蛍光タンパク質(光の色を変換するタンパク質)に受け渡され、オワンクラゲは明るく緑色に光る。このような現象を「生物発光共鳴エネルギー移動(BRET)」と呼ぶが、実は多くの発光生物でBRETが起きている。一体、なぜこのような面倒な方法を取るのだろうか。その理由の一つはさまざまな色の光を放つためであり、もう一つの理由が、BRETにより光が増強されるためと考えられている。

 発光タンパク質は、特定の遺伝子を発現する細胞やがん細胞などを体の中で光らせる道具として研究・応用されてきたが、光が暗く色の種類も少ないため、世界中で明るく色の異なる発光タンパク質の開発が競われていた。その中でわれわれは、大阪大学の永井健治教授と共同で、BRETという生物の“匠”を応用して発光タンパク質と蛍光タンパク質を人工的にハイブリッド化し、当時としては世界一の明るさを誇る青緑・黄緑・橙(だいだい)色の「ナノ・ランタン」という新たな光るタンパク質を開発した。その光は肉眼ではっきり見えるほどであり、文字通り世界一に輝いたのである。

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