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【理研が語る】
「ゴジラ」の形態変化は「進化」なのか オタマジャクシがカエルに変わる「発生」では…科学者が食いつくポイント
今年7月に、友人に誘われて映画「シン・ゴジラ」を見にいった。映画の中で、陸に上がった魚のようにおなかを地につけてはいずっていたゴジラが急に立ち上がり、前脚を生やしてその姿を変えた際に、それを見た政府の人間が「まるで進化だ」と漏らすシーンがあった。ゴジラのこの形態変化は進化といえるのだろうか。
進化論の祖、チャールズ・ダーウィンは著書「種の起源」の中で、進化を“変化を伴う継承”と表現している。だが、これは定義としてはあいまいな表現で、実際に進化を研究する際には何を調べたらいいのか分かりづらい。私がこれまで出合ったさまざまな表現の中で最も分かりやすく、かつ的確な進化の定義は、“集団内遺伝子頻度の変化”だ。
遺伝子頻度とは、集団内の何%の個体が、ある遺伝子を持っているかということである。自然界で進化した生物を扱う研究では、長い時間を経て頻度が0%から100%へ変化した遺伝子に注目することが多いため、一般的に進化というと、頻度を意識することはあまりないかもしれない。しかし、私のように実験室で進化を再現する実験進化学の研究を行っている者にとっては、短期間で起きる20%から50%への頻度変化が決して見逃せない集団の進化なのである。
私が理解している限り、「シン・ゴジラ」に出てきたゴジラは1個体だけであり、集団の解析はできない。仮にあのゴジラが1個体で種として存在しうる生物だったとしたら、映画に出てきた1個体の中の遺伝子の変化は進化に値するかもしれない。
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