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【仕事どうする? 女の流儀(2)】
「おかえり」と言われぬ職場復帰 マタニティー・ハラスメントの悔しさを乗り越えて
育児休業から復帰した初日に、こんなに疎外感を覚えるとは思ってもみなかった。
今から5年前、音楽ソフトメーカーの正社員として大阪営業所に勤めていた太田結弓(ゆゆみ、40)は、1年半ぶりの職場で立ちすくんだ。オフィスのレイアウトが変わっていて、どの電話が鳴っているのかも分からない。
「電話もとれないの」
一人の女性スタッフが嫌みを言うと、周囲の女性たちも笑った。
職場では、太田の復帰に伴いアルバイト女性の契約が切れることに反感が広まっていた。復帰しても「おかえり」と言ってもらえず、険悪な空気が流れた。
同僚の男性は、「結婚して、子育てしてっていう女性がめずらしい音楽業界。正直、扱い方が分からなかった」と振り返る。当時、太田が所属していた大阪営業所で正社員の女性は1人、結婚・出産した女性はいなかった。
職場で嫌み
一方で太田にも、復帰後に内勤へ配属されたことに複雑な思いがあった。
出産までの10年間、制作や宣伝という第一線にいた。8年間続けた宣伝では、担当アーティストをラジオやテレビ、新聞、雑誌に露出させるための売り込みや、取材の立ち会いで社外を駆け回った。24時間をささげるような日々だったが、好きな音楽に携われる喜びがあった。
「また宣伝の仕事をしたかった。場合によっては子供や夫に負担をかけるけれど、周囲の協力も得ながら続けたいと思っていた」