産経WEST

【響き合う~新生テクニクス(19)】たった1人のアフターケア ブランド復活で再び舞台に

産経WEST 産経WEST

記事詳細

更新

【響き合う~新生テクニクス(19)】
たった1人のアフターケア ブランド復活で再び舞台に

ターンテーブルの技術を守りながら、改良を続ける三浦寛さん ターンテーブルの技術を守りながら、改良を続ける三浦寛さん

 パナソニックのロゴを掲げたビルが立ち並ぶ大阪府門真市。ここに、一度途絶えたはずのテクニクスブランドの「命」をつないできた部屋がある。広さは3畳ほどで、棚は小さな電子部品や古いターンテーブルで占領されている。

 部屋の主は三浦寛。昭和52年に入社し、テクニクス工場の製造担当を振り出しに、ターンテーブルや電子楽器の技術開発に携わってきた。いまなお世界中のDJに絶大な人気を誇るターンテーブル「SL-1200」の愛用者から修理を頼まれると、この部屋にこもって作業してきた。

 部屋は建物の入り口から何重ものセキュリティーチェックを経た先にあり、すぐそばの大部屋では、技術者らがデータを検証し議論を交わしている。同じフロアでまったく別の時間が流れていたことに、新生テクニクスの技術者を束ねる井谷哲也は最近まで「気づかなかった」という。

 三浦は、自身の技術者人生の舞台だったテクニクスが自分の代で終わり、無念の思いを抱えてきたという。修理作業は業務外。個人的なものだった。

 しかし、平成26年にテクニクスブランドの復活を世界に宣言した小川理子(みちこ)は、当然のように三浦に声をかけた。

 「ターンテーブル、やるよね」

 三浦は「ただうれしかった」と破顔する。テクニクスを次世代につなげることができるのだ。

 三浦には定年が迫る。あと数年、テクニクスの復活が遅ければ、必要な技術は途絶えていたかもしれない。「いいタイミングに声をかけていただきました」

 新生テクニクスの名の下で出すターンテーブルは単なる復刻版であってはならない。技術の進展で音に対する要求は格段に高くなっている。三浦ら技術陣はその心臓部で、レコードを回す機構「ダイレクトドライブ」のぶれを無くすために新技術を投入。振動を抑えるために回転盤に真鍮(しんちゅう)を用いるなど工夫を重ねた。

 テクニクスは進化し続けてきたブランド。それでもまだ、変わり続けるという。「技術って、追求すればいくらでも改良できるんです。それがモノづくりの楽しみでもあります」。三浦は再び笑った。(敬称略)

「産経WEST」のランキング