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【水中考古学へのいざない(12)】
カリブの海賊は「荒くれの大男」ではなく意外と小柄だった 難破船ウィダ号は語る
大海原を舞台に、いなせな海賊ジャック・スパロウらが織り成す血わき肉おどる熱い戦い。空前の海賊ブームを巻き起こした映画「パイレーツ・オブ・カリビアン」は、むろん架空の物語だが、17~18世紀、カリブ海を中心に暴れ回った実在の海賊は数え切れない。前回は海底に沈んだカリブの海賊たちの拠点港を紹介したが、今回は海賊船そのものの引き揚げ作業を。
†略奪品は平等に分配
1985年、米国東部マサチューセッツ州のコッド岬沖500メートル。穏やかな海面が泡立ち、海中から潜水マスクと青のドライスーツをまとった男が息せき切って浮上した。米国人水中探検家バリー・クリフォードだ。
彼は深さ10メートルの海底から海藻と貝殻がこびりついた砲身と「WHYDAH」の刻印のある青銅の鐘を引き揚げた。周辺海域を15年も捜索し、ついに海賊船「ウィダ号」と略奪品のありかを突きとめた瞬間だった。
「ナショナル・ジオグラフィック(日本版)」(99年5月号)によれば、この船から見つかった遺留品の数は10万点を超える。スペインの金銀貨、袋詰めされた砂金に金のインゴット、腕輪や指輪などの豪華宝飾品のほか、武器類も次々に回収された。ウィダ号遭難後、数少ない生存者の一人だった船大工の証言では、積んでいた略奪品は海賊たちの決めたルールに従って平等に分けて箱に納め、甲板の下に保管していたらしい。
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