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【亀岡典子の恋する伝芸】劇団新派に新風-歌舞伎界から市川月乃助に続き市川春猿も入団、「様式美+リアルさ」の魅力、深化へ

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【亀岡典子の恋する伝芸】
劇団新派に新風-歌舞伎界から市川月乃助に続き市川春猿も入団、「様式美+リアルさ」の魅力、深化へ

劇団「新派」の入団会見に臨んだ市川春猿(中央)と水谷八重子(右)、波乃久里子(左)=東京都中央区(飯塚友子撮影) 劇団「新派」の入団会見に臨んだ市川春猿(中央)と水谷八重子(右)、波乃久里子(左)=東京都中央区(飯塚友子撮影)

古典でも現代劇でもない、新派にしかない独特のムードがある

 新派は、日本人の哀歓や情緒を情感豊かに表現する劇団として、およそ百三十年の歴史を有してきた。河合武雄、初代喜多村緑郎、花柳章太郎ら名優の活躍で、大正から戦後にかけて黄金時代を迎え、その後は初代水谷八重子が新派の顔となった。

 「新派悲劇」という言葉があるように、尾崎紅葉の「金色夜叉(こんじきやしゃ)」、泉鏡花の「婦系図(おんなけいず)」など、身分や経済的な理由で男女が破綻していく悲劇が多いのも特徴で、いまも大切なレパートリーとなっている。「切れるの別れるのってそんなことはね、芸者のときに言うことよ。今の私には死ねと言ってください」(『婦系図』より)などの名セリフをそらんじている人も多いだろう。

 新派は、歌舞伎のような型のある古典ではなく、新劇や小劇場演劇のような現代劇でもない、新派にしかない独特のムードがあり、とりわけ日本語の美しさは大きな魅力といえる。

 ところが、二十年ほど前からだろうか。新派の公演は減少傾向にあった。初代八重子が亡くなったことも大きかったが、時代が変わり、演劇だけでなく娯楽全体が多様化したことも一因であろう。

 しかし、新派には、新派にしか上演できない作品があり、前述した「婦系図」や、鏡花の「日本橋」などに見られる風情や演技術、せりふ術は、新派の財産というだけでなく、日本の演劇の大切な財産である。

 また、歌舞伎の女形ではなく、新派にだけ継承されてきた女形の芸も貴重である。今年の11月11日、長く新派唯一の女形として活躍してきた英太郎(はなぶさ・たろう)さんが急逝し、ファンを悲しませた。

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