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【亀岡典子の恋する伝芸】ただ芸を継ぐのではない、歴史も含めて丸ごと背負う-「一期一会」の襲名披露公演

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【亀岡典子の恋する伝芸】
ただ芸を継ぐのではない、歴史も含めて丸ごと背負う-「一期一会」の襲名披露公演

襲名披露公演で三番三(さんばそう)を務める狂言師の十四世茂山千五郎さん=京都市左京区の京都観世会館(村本聡撮影) 襲名披露公演で三番三(さんばそう)を務める狂言師の十四世茂山千五郎さん=京都市左京区の京都観世会館(村本聡撮影)

 新しい当主は、44歳という若さ。しかし、幼いころから、名門・千五郎家の当主となることが運命づけられていたからであろう、襲名の舞台では、おおらかな風情の中にもすでに、当主としての責任と重みを感じさせた。千五郎さんの舞台は20年以上前から見続けているが、襲名を経て、一挙に大きさを増したような、そんな気がした。襲名の不思議であろう。そんな千五郎さんが牽引する21世紀の茂山家がどんな活動をして現代に狂言を広めていくか、期待したい。

「衣を重ねて着る」の意味も

 ところで、襲名とは、どういう意味を持つものなのだろう。

 昨年、急逝した歌舞伎の十世坂東三津五郎さんは、平成13年の自身の襲名の際、こんなふうに語っていた。

 「襲名の『襲』という字は『跡を受け継ぐ』という意味とともに、衣を重ねて着るという意味もあります。十代目を襲名するということは、初代から九代目までの衣も一緒に重ねて着るということだと思うんです」と-。

 以来、さまざまな襲名を取材するたびに、この話を思い出す。

 ただ、先人の芸を踏襲するだけではない。その歴史もふくめて、丸ごと、襲名する当人が背負うのだということなのだ。その重さを感じるからこそ、こちらまで粛然とした気持ちになるのかもしれない。日本の伝統芸能はそういう歴史の積み重ねの上に成り立っている。

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