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【関西プチ遺産】醸造法成立させた日本清酒の“聖地”正暦寺(奈良市)

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【関西プチ遺産】
醸造法成立させた日本清酒の“聖地”正暦寺(奈良市)

清酒発祥の地の石碑が建つ正暦寺=奈良市 清酒発祥の地の石碑が建つ正暦寺=奈良市

 奈良市の中心部から南東方向、直線距離で6キロほどの山中に入るあたりに菩提山正暦寺(しょうりゃくじ)という寺がある。この寺の一角に「日本清酒発祥之地」と刻まれた石碑がある。裏面には「清酒(すみさけ)造りの起源 日本清酒は室町時代(一四〇〇年代初頭)に菩提山正暦寺において創醸され、その高度な醸造技術は、近代醸造法の基礎となりました」とある。

 酒に関する『古事記』や『日本書紀』の記述には、しばしば「酒を醸(か)む」という表現が出てくる。カムとは「噛む」で、デンプンの類を口の中で噛んで、それを瓶に吐き出し、それが発酵して「かみ酒」となる。これは今日の透き通った酒とは異なり、濁った酒である。奈良・平安時代には麹(こうじ)を用いた酒造りとなる。鎌倉・室町時代になると寺院が酒造りを行い、これを売ることによって有力な財源となった。

 何ゆえ正暦寺が清酒発祥の地なのか。1489年(あるいは1355年か)に成立したとされる『御酒之日記』に正暦寺での酒造りの記述がある(小野晃嗣『日本産業発達史の研究』1941年)。

 正暦寺では仕込みを3回に分けて行う「三段仕込み」、さらに発酵の進行を止めるため(腐敗を防ぐため)に火入れを行うなど、今日行われている醸造法の基礎が正暦寺で確立したとされる。近年ここで始まった室町時代の技術を復元する取り組みが、地元奈良の酒造業者の手で行われており<住原則也「清酒のルーツ、菩提●(ぼだいもと)の復元」『アゴラ』4 2006年>、いくつもの銘酒が売り出されている。

 お酒好きの私のような左党にとっては、正暦寺はまさに聖地である。(伊藤純・大阪歴史博物館)

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