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【亀岡典子の恋する伝芸】「安珍・清姫伝説」の鐘の数奇な運命 紀州に攻め入った秀吉が京都に運び、いったんは里帰りも再び…

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【亀岡典子の恋する伝芸】
「安珍・清姫伝説」の鐘の数奇な運命 紀州に攻め入った秀吉が京都に運び、いったんは里帰りも再び…

「安珍・清姫伝説」の鐘が安置されている妙満寺で公演の成功祈願を行う中村雀右衛門=京都市左京区 「安珍・清姫伝説」の鐘が安置されている妙満寺で公演の成功祈願を行う中村雀右衛門=京都市左京区

鐘があるべき道成寺にはなく…

 和歌山県日高町の道成寺(どうじょうじ)といえば、古典芸能ファンにはなじみ深い古寺だ。

 というのは、道成寺の釣鐘は、能の「道成寺」や、歌舞伎の「京鹿子娘道成寺(きょうかのこむすめどうじょうじ)」のもとになった安珍・清姫伝説で知られる鐘で、実際、いずれの舞台にも大きな鐘が吊り下げられ、独特の存在感を放っている。

 ところが、この釣鐘、実は道成寺にない、というのをご存じだろうか。道成寺の鐘はいま、京都市左京区の妙満寺に安置されている。だから、紀州の道成寺に釣鐘を見にいっても、そこには鐘楼跡があるだけだ。

 ちなみに、安珍・清姫伝説とは-。

女性の恋の執心を描いた物語

 時は延長6(928)年、紀州の道成寺が701年に建立されてから230年あまりが経ったころ。奥州白河の安珍という修験者が熊野に参詣する途中、紀州、真砂の庄司の館に泊まった。庄司の娘、清姫は美しい若者の安珍に思いを寄せる。安珍は「熊野参詣の帰りにもう一度立ち寄る」と約束するが、その約束を破り帰途につく。

 清姫は怒りと悔しさから安珍を追いかけ、日高川にさしかかると、蛇身となって川を渡り、道成寺の鐘の中に隠れた安珍を焼き尽くしてしまうのだった。

 能の「道成寺」は、道成寺に伝わる安珍・清姫伝説をもとに、女性の恋の執心を描いた作品だ。焼き尽くされた鐘が再興する日のこと。美しい白拍子花子が現れ、舞を見せることを条件に寺に入れてもらう。花子が隙を見て鐘に近づくと、鐘は落下し、花子はその中に。やがて鐘が上がると鬼女が現れ-というストーリー。

 一方、「京鹿子娘道成寺」は、同じく釣鐘再興の日、寺にやってきた白拍子花子がさまざまな女心を踊るという内容。しかし、その奥底には鐘への執心があり、つねに鐘への思いを秘めて踊るという教えがある。

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