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【紀伊半島豪雨5年】夫失い、70歳超え防災士に 体験伝える紙芝居も制作 久保栄子さん

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【紀伊半島豪雨5年】
夫失い、70歳超え防災士に 体験伝える紙芝居も制作 久保栄子さん

自作の紙芝居で体験を語る久保栄子さん。70歳を超えて防災士の資格を取得した=和歌山県那智勝浦町 自作の紙芝居で体験を語る久保栄子さん。70歳を超えて防災士の資格を取得した=和歌山県那智勝浦町

 紀伊半島豪雨による災害で29人が犠牲になった和歌山県那智勝浦町に「おばちゃん防災士」がいる。自宅に川の水が流れ込み、夫の二郎さん=当時(69)=を亡くした久保栄子さん(73)。70歳を超えてから防災士の資格を取り、自分の体験を紙芝居に描いた。あの日から5年。災害の恐ろしさや親しい人を失った悲しみ、避難の大切さを今も伝え続けている。

 「水が来た!」。5年前の9月4日未明、一緒に暮らす長女靖子さんの叫び声が聞こえた。水かさが増していた近所の川の様子を見ようと外に出て、駐在所の警察官や隣人と話して帰ってきた数分後のことだった。

 平屋の自宅に濁流がなだれ込み、3人は窓から脱出。どんどん増えていく水の中で家の樋に必死につかまり、栄子さんと靖子さんは助かったが、二郎さんはのみ込まれた。「あかん、無理や」。最後の言葉は、夫の近くにいた靖子さんから翌朝聞かされた。

 「夫と同じ車を見ると、乗っているのではないかと思ってしまう」。災害後、二郎さんを失ったことを実感できない日々が続いた。「もっと早く『逃げよう』と言っていれば…」と悔やむ気持ちも強まっていった。

 転機は発生から2年余り後の2014年1月。地元の中学校で開かれた防災セミナーで、災害時の「手作りトイレ」の説明をしていた女性防災士に会ったことだ。

 「私にできるのはこれだ。年齢なんて関係ない」。資格取得の講座を受け、300ページ以上のテキストを手に音読を繰り返し、試験に臨んだ。

 防災士になってから、体験を紙芝居で伝える地域活動を始めた。作品は一つ一つ手書きで、当初9枚の構成だった内容は、その後練り上げて30枚になった。「『まさか』と思うような災害は、いつでもどこでも起こり得る。災害に備えること、そして早めに逃げることが何よりも大切」と力強く語った。

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