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【理研が語る】化学者の誇りと喜び 生命科学に挑戦

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【理研が語る】
化学者の誇りと喜び 生命科学に挑戦

近年開発したPET分子プローブの1つ「C‐11-標識ビタミンB1の構造式」。ビタミンB1に放射性炭素C‐11で目印をつけ、ここから放出される放射線を計測することで、ビタミンB1が体内のどこで働いているのかを観察することができる 近年開発したPET分子プローブの1つ「C‐11-標識ビタミンB1の構造式」。ビタミンB1に放射性炭素C‐11で目印をつけ、ここから放出される放射線を計測することで、ビタミンB1が体内のどこで働いているのかを観察することができる

 「短寿命の放射性炭素(C‐11)の導入を目指して、わずか5分で終結する『炭素-炭素結合型』の化学反応を開発すること」

 大学院の師の薫陶は厳しかった。次代の化学を慧眼したPET研究の開拓的課題であったが、実現は不可能だと思われた。「炭素-炭素」の結合反応が難しいだけでなく、反応に使える時間はわずか5分程度だからだ。

 早速、反応開発に着手したが、反応が5分で終結するかどうかはわからない。通常の化学では、目的物を合成するためには時間を惜しまないからだ。反応時間とは一体何か。概念への挑戦でもあった。

 その後、5年の歳月をかけて、5分で終結する念願の化学反応の開発に成功した。さらに2年の歳月をかけて反応を改良し、悲願のヒト投与用のPET分子プローブの合成に成功した。現在、この反応はさらなる発展を遂げて、世界中の創薬・医療分野のPET研究者に利用されている。「研究はみずみずしく明快に」。恩師の言葉を思いだす。

 土居久志(どい・ひさし) 名古屋大大学院修了。スウェーデン・ウプサラ大PETセンターおよび岐阜大大学院医学系研究科での研究活動を経て、平成17年より理研の分子イメージング研究に参画。現在、理研ライフサイエンス技術基盤研究センター標識化学研究チームのチームリーダー。生物活性有機化合物に放射性核種を導入するための化学的方法論の開発を行っている。

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