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【坂口至徳の科学の現場を歩く】毒で完熟・豊作を…未熟なトマト「毒」調節の遺伝子を発見 奈良先端大、タバコのニコチンやジャガイモ芽のソラニン共通

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【坂口至徳の科学の現場を歩く】
毒で完熟・豊作を…未熟なトマト「毒」調節の遺伝子を発見 奈良先端大、タバコのニコチンやジャガイモ芽のソラニン共通

毒性成分のマスター遺伝子を過剰に発現させたトマト(奈良先端科学技術大学院大学提供) 毒性成分のマスター遺伝子を過剰に発現させたトマト(奈良先端科学技術大学院大学提供)

 トマトの未熟な果実には「トマチン」という毒性のある物質が含まれ、食中毒を起こす原因になることが知られている。トマトが害虫など外敵から身を守るための物質とみられ、完熟するに伴いトマチンは少なくなり、安全に食べられるようになる。

 このトマチンの蓄積量をコントロールする遺伝子を奈良先端科学技術大学院大学バイオサイエンス研究科の庄司翼(しょうじ・つばさ)准教授らが、国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構などとの共同研究で明らかにした。この遺伝子はトマチンが植物体内で作られる過程に関わるすべての遺伝子を統括する「マスター遺伝子」。今後、トマチンの含量を少なくするなど有用なトマトの栽培に役立つ可能性がある。

 庄司准教授らは、これまでタバコに含まれるニコチンを合成するマスター遺伝子を発見している。このニコチンをトマトはつくれないが、庄司准教授らは、トマトの全ゲノム(遺伝情報)を調べ、ニコチン合成のマスター遺伝子と構造がよく似た遺伝子(JRE4)を発見し、その作用を調べた。

 遺伝子組み換えトマトを使った実験では、この遺伝子を過剰に働かせると、トマチンの合成に関わるほとんどの酵素遺伝子の発現が促進されてトマチンの量が増加、逆に抑制すると減少した。さらに、この遺伝子の役割を詳細に調べたところ、トマチンを作り出す過程で働くさまざまなタンパク質(酵素)の蓄積を増やすかどうか、全体を見て調節する司令官の役割を果たすマスター遺伝子であることがわかった。

 トマトなどナス科の植物は、毒性グルコアルカロイドと呼ばれる物質を生成することがある。食べてはいけないとされてきたジャガイモの芽に含まれる「ソラニン」も、トマチンの類縁物質で、この遺伝子により制御することも考えられる、という。

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