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【理研CDBが語る】人間の冬眠は可能か 低代謝医療の実現で搬送医療は革命的に変わる

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【理研CDBが語る】
人間の冬眠は可能か 低代謝医療の実現で搬送医療は革命的に変わる

冬眠するサル「ピグミースローロリス」 冬眠するサル「ピグミースローロリス」

 冬眠をするサルがいるのをご存じだろうか。2004年にマダガスカル島で世界で初めて冬眠するサル、フトオコビトキツネザルが見つかった。私は勤務医時代にこの論文を読んで、人間を冬眠させたいと思い、研究の世界に足を踏み入れた。それは、人間の冬眠が実現すると搬送医療が革命的に変わるからである。

 重篤な患者は病院に到着するまでの搬送で予後が左右されることがある。2つの要因がある。

 1つ目は搬送中の医療技術の問題だ。健康な人間は肺で取り込んだ酸素を心臓によって体の隅々に送り届けている。重症患者はこれが破(は)綻(たん)し重篤な酸素不足に陥る。そこで酸素供給を増やす治療を行うわけだが、搬送中は病院と同じレベルで酸素供給することは難しく、搬送中に容体が悪化したり、重症過ぎて搬送そのものができない事例が存在する。

 2つ目は搬送にかかる時間の問題だ。心筋梗塞や脳梗塞は発症後、一定時間を過ぎると完全に回復する可能性が低くなる。このため、病院の近くで発症して、搬送時間が短ければ助かったかもしれないというケースも多く存在する。

 冬眠はこのような今日の搬送医療が抱える問題を解決できる可能性を秘めている。冬眠中の動物は生命活動に必要な酸素需要が著しく低下しており、天然の省エネ状態に入っているからだ。つまり、冬眠級の低代謝状態を人間に実現できれば、たとえ特別な酸素供給ができなくても生命活動を維持できるようになるのではないか。治療までの開始時間が限られていても、病気そのものの進行を遅らせることで時間が大幅に稼げるのではないか。これが冬眠による低代謝療法の基本概念である。

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