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【坂口至徳の科学の現場を歩く】健康に脂質が不可欠…免疫細胞「リンパ球」の動き促進、阪大が世界初の実証

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【坂口至徳の科学の現場を歩く】
健康に脂質が不可欠…免疫細胞「リンパ球」の動き促進、阪大が世界初の実証

正常マウスのリンパ球にLPAを添加すると、丸いリンパ球は形態を変化させ細長くなった(右上)。受容体(LPA2)欠損マウスではそのような形態変化は認められない。緑色は、培養プレートに接着している面積(梅本英司・大阪大准教授提供) 正常マウスのリンパ球にLPAを添加すると、丸いリンパ球は形態を変化させ細長くなった(右上)。受容体(LPA2)欠損マウスではそのような形態変化は認められない。緑色は、培養プレートに接着している面積(梅本英司・大阪大准教授提供)

 ことしもインフルエンザの流行期に入ったが、ウイルスや細菌など病原体が体内に進入したさい、これを異物(抗原)として排除し、感染を食い止めるのが免疫のシステムだ。主要な担い手はT細胞などリンパ球といわれる免疫細胞で、ノドや腋(わき)の下などにあるリンパ節(0・2センチ-3センチ)内に密集し、待機している。そこでリンパ球は病原体などを迎え撃つのだが、最初の段階で活発に動き回ってパトロールし、抗原の刺激を受けることが必要だ。しかし「窮屈なスペースのリンパ節内をどのようにしてスムーズに動いているのか」という免疫力に関わる重要な仕組みが不明だった。

病原体パト…慢性炎症、がん治療の新・制御法開発に期待

 大阪大学大学院医学系研究科・免疫制御学講座の梅本英司准教授、同学・未来戦略機構の宮坂昌之特任教授、フィンランドのトゥルク大学の竹田彰研究員らの研究グループは、特定の脂質がリンパ球の形を細長くして移動しやすくするなど重要な役割を果たしていることを世界で初めて明らかにした。リゾホスファチジン酸(LPA)という脂質で、リンパ球が動き回るときに足場にする細胞が作り出していた。LPAを標的にした創薬などで免疫力を高めたり、過剰な免疫を抑えたりする方法の開発につながる可能性もある。この成果は、英国の生命科学誌「イーライフ」誌電子版で公開される。

 研究グループは、リンパ球が移動の足場にする細胞が、LPAを作り出す酵素を高効率で発現することに着目。足場の細胞にだけLPAを欠くマウスを作製したところ、このマウスのリンパ節ではリンパ球の運動が活発でなくなった。これには、6種類あるLPAの受容体うち、1種類(LPA2)だけが関わっていることがわかった。

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