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【亀岡典子の恋する伝芸】役は覚えるもの、書いちゃだめ-先輩の教え、後輩にも 名人に聞く 歌舞伎俳優・澤村田之助(下)

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【亀岡典子の恋する伝芸】
役は覚えるもの、書いちゃだめ-先輩の教え、後輩にも 名人に聞く 歌舞伎俳優・澤村田之助(下)

インタビューに答える沢村田之助さん(荻窪佳撮影) インタビューに答える沢村田之助さん(荻窪佳撮影)

 歌舞伎史上3人目の「歌舞伎脇役」としての人間国宝。江戸の世話物の女房でにじませる匂いや、義太夫狂言の時代物における位の高い女性の品格などはこの人のもの。女形として長年酷使した膝を痛め、人工関節の手術をしたため、一昨年5月の歌舞伎座以来、舞台に出ていないのは寂しい限り。後進の育成のために尽力し続ける田之助さんに話を聞いた。今回は下の巻。

楽屋泊まりで早朝から掃除

 --田之助さんは、さまざまな女形の先輩に教えを受けられたそうですね

 田之助 そうですね。世話物は(尾上)梅幸兄さん、時代物は(中村)歌右衛門兄さんに教わりました。あと、若いころ、(尾上)多賀之丞(たがのじょう)さんのそばにずっといたことも大きいですね。

 --多賀之丞さんといいますと、中芝居で活躍されていたのを六代目尾上菊五郎さんが一座に迎え、後に菊五郎劇団で脇役として活躍された女形さんですね。人間国宝にもなられました

 田之助 昔は、地方では楽屋泊まりというのがよくありました。その際、多賀之丞さんの楽屋に一緒に入れていただいていたんです。大阪の千日前にあった歌舞伎座でも私たち若手は楽屋に泊まっていました。多賀之丞さんはいつも朝6時頃から姉さんかぶりして楽屋の拭き掃除をされるんですよ。「楽屋はきれいにしとくもんなんだよ」とおっしゃって。私も寝てられませんから起きて一緒に掃除しました。そういう方だったんです。でも、そういうことが後々、役に立ちましたねえ。

 そうそう、菊五郎劇団の立師の名人だった坂東八重之助さんも厳しい方でした。私が教えていただいたことや気がついたことをノートに書いていると、「坊ちゃん、お役のことは見て、ここ(頭)で覚えるんですよ。書いちゃだめですよ」と言われました。

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