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【桂春団治さん死去】羽織脱ぎ一気に別世界 ネタを厳選、美しく絶品の所作 

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【桂春団治さん死去】
羽織脱ぎ一気に別世界 ネタを厳選、美しく絶品の所作 

 3年前の5月、大阪市内のホールで開かれたNHKの公開収録。「前」を務めた中堅が爆笑をさらった客席の余韻が残る中、春団治さんはゆっくりと高座に現れた。

 「相も変わりませんばかばかしいところを一席聞いていただきまして…」

 お決まりのせりふと、羽織を一瞬で脱ぐおなじみの華麗な所作。これを合図に喧(けん)噪(そう)は一気に静まり、まるで別世界へ。金のない若い衆が酒の肴(さかな)を持ち寄り騒動となる「寄合酒」に、いつの間にか引き込まれていった。

 ネタの掘り起こしや改編に尽力した桂米朝さんらに対し、春団治さんはネタを厳選し、究極に仕上げるスタイルを貫いた。男が夜ばいする「お玉牛」で、牛の尻尾を見立てた扇子をクルッと1回転させ、自分の額を打つ所作。放(ほう)蕩(とう)の親子がお茶屋で鉢合わせする「親子茶屋」での、指先まで神経が行き届いた踊りのさま。弟子の小春団治さんは「師匠のあの美しい動きは絶対にまねはできません」と話した。

 公開収録の後は「静養」や「骨折」を理由に休演が続いた。「対談でもいいので出てほしい」という周囲の勧めも断ってきた。公私ともに師を支えた弟子の春之輔さんは「『春団治』という大看板を背負っている以上、中途半端な形で出るわけにはいかないということです」とおもんぱかった。

 そんな中、昨年3月上旬に京都府内で行われた一門会の開演前にサプライズで登場した。挨拶だけだったが、「復帰に意欲を見せてくれた」と周囲を喜ばせた。一方で、その直後の同19日、「上方落語四天王」として、戦後の落語界を支え合った桂米朝さんが亡くなった。

 「終戦後、滅亡寸前だった上方落語を、米朝さんは六代目松鶴さん、五代目文枝さんとともに復興させるべく、落語会を開催したものです。四天王も僕一人になり、寂しい思いでいっぱい」。春団治さんはそう語った。まさに、跡を追うかのように旅立った。(豊田昌継)

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