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【関西街角文化論】永井良和(116)公衆電話哀歌-2-跡地が立ち飲み酒場に 

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【関西街角文化論】
永井良和(116)公衆電話哀歌-2-跡地が立ち飲み酒場に 

 こういう場所に1台だけ残された電話をつかうのは気が引ける。上機嫌な人たちの歓談の輪に切りこんで電話機に近づくのはなかなかむずかしい。

 大阪駅周辺のビルの地下では、にわかづくりの「公衆酒場」があちらこちらに見られる。他の利用者に迷惑をかけるケースもあったのだろう。「この周辺で飲酒をしないように」との掲示が管理会社の手で貼られていた。

 思えば「公衆便所」という表現も減った。露骨すぎるせいか、いまは「市民トイレ」というような示しかたが好まれる。「公衆浴場」は、銭湯、風呂屋をさす、やや堅苦しい用語だが、これも目にする機会が減った。「公衆道徳」も、「マナー」などといいかえられつつある。

 公衆電話の電話機が姿を消していくだけでなく、「公衆」という言葉も減っているようだ。

 公衆電話の「遺跡」でくりひろげられる小宴。庶民の活力を感じるいっぽうで、傍若無人なふるまいには公衆道徳の衰退を読みとることもできる。

     

 関西大学社会学部教授で現代風俗研究会会員の永井良和さんが、街角の視点から関西の文化を考察します。永井さんは昭和35年、兵庫県生まれ。京都大学大学院文学研究科博士課程(社会学)学修退学。著書に『社交ダンスと日本人』(晶文社)、『南沙織がいたころ』(朝日新書)、共著に『南海ホークスがあったころ』(河出文庫)など。

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