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三江線廃止検討 「病院に行けなくなる」高齢者ら動揺 沿線自治体苦渋、存続へ打つ手は…

「利用者の減少は否めないが、JR三江線の持続は第一だ」。広島県三次市と島根県江津市を結ぶJR三江線廃止の可能性が浮上した16日、三次市の増田和俊市長は苦渋の表情を浮かべて語った。これまで、沿線の6市町は利用促進に取り組んできた一方で、赤字を払拭することができなかった。山間部の同市などでは通院に使う高齢者も多く、動揺が広がっている。
三次市と安芸高田市、島根県江津市など6市町に計35駅がある三江線。山間部を走る路線のため、利用者は減少し続けており、昨年度は1キロ当たりの利用者が1日約50人と、JR西日本が発足した昭和62年度に比べ9分の1にまで落ち込んだ。
このため、沿線6市町は利用促進を図ろうと平成22年、JR西と協力して「三江線活性化協議会」を設立。24年には、同協議会とJR西がバスを使った潜在需要の調査を行ったが、1・2倍の増客にとどまった。
JR西ではこの日、松岡俊宏・米子支社長が三次市を訪問。三江線廃止も視野にした新しい交通網の検討を伝えられた増田和俊市長は報道陣に「持続してもらいたい思いは沿線市町同じ。住民一人一人の気持ちを高めていけるよう取り組みを促進していく」としながらも、協議会の取り組みが「正念場を迎えた」とも述べ、危機感を露わにした。
また、島根県交通対策課によると、JR西から同県には5日に説明があり、「利用者のニーズに合致した持続可能な地域公共交通の構築に向けた検討に入りたい」という趣旨の話だったという。
山間部で暮らす高齢者には動揺が広がった。三次駅にいた中下貴枝子さん(79)は「通院だけでなく、買い物にも使う。無くなったら困る」と困惑。別の主婦(81)は「病院はバスで行けない。地元の診療所にかえるしかない」と表情を曇らせた。