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【関西の議論】医療用麻薬「事実無根のタブー視」(下)「依存症になる」の誤解蔓延 痛み治療が〝中毒〟にならないメカニズム

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【関西の議論】
医療用麻薬「事実無根のタブー視」(下)「依存症になる」の誤解蔓延 痛み治療が〝中毒〟にならないメカニズム

痛みは単に身体的なものにとどまらない。心理面、社会面、スピリチュアル面にまたがる全人的苦痛(トータルペイン)と捉えるのが今の主流となっている。それを和らげる有効な手立ての一つが「オピオイド鎮痛薬」だ

 オピオイド使用にあたって患者や家族が気がかりなのは、やはり精神依存の問題だろう。

 痛みのない状態で使えば、脳に多幸感がもたらされ、やがて依存に陥っていくとされる。

 脳に多幸感を感じさせる神経伝達物質はドーパミンだ。普段はGABA(ギャバ)という別の物質によって抑えられているが、オピオイドを使うとGABAの放出が妨げられ、大量のドーパミンが脳を興奮させる。

 では、痛みの激しいがん患者の場合はどうか。患者の脳内では、日常の痛み刺激により、すでにダイノルフィン(内因性オピオイド)が高い状態で出ている。このダイノルフィンの存在が、患者と乱用者との最大の違いだという。

 ダイノルフィンはドーパミンを出す神経にくっつき、ドーパミンの産出を抑制する。このため、痛みのある患者がオピオイドを使用しても「ドーパミンの量はマイナスだったのが普通になる程度。決して依存にはならない」(丸山教授)。

痛みの「記憶」

 丸山教授によれば、1980年代に入って、脳だけでなく脊髄後(こう)角(かく)にも「記憶」にかかわる受容体があることが発見された。

 たとえば、スポーツ選手は「身体で覚える」という言葉を使う。この場合は、小脳で反復動作が記憶されている。

 同じことが、痛みにも起きている。頻発する痛みを我慢していると、それが脊髄で記憶されてしまう。丸山教授は「記憶された状態は、思い出しやすい状態。小さな刺激でも痛みやすくなってしまう」とそのリスクを説明した。

 それが高じて、本来痛くない刺激でも痛いと感じてしまう「異痛症」(アロディニア)になる患者もいるという。

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