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【関西の議論】医療用麻薬「事実無根のタブー視」(下)「依存症になる」の誤解蔓延 痛み治療が〝中毒〟にならないメカニズム

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【関西の議論】
医療用麻薬「事実無根のタブー視」(下)「依存症になる」の誤解蔓延 痛み治療が〝中毒〟にならないメカニズム

痛みは単に身体的なものにとどまらない。心理面、社会面、スピリチュアル面にまたがる全人的苦痛(トータルペイン)と捉えるのが今の主流となっている。それを和らげる有効な手立ての一つが「オピオイド鎮痛薬」だ

「脳内麻薬」の発見

 ところで、痛みは電気として神経回路を上っていき、脊髄を介して脳に届く。オピオイドはこの中継地点の脊髄で直接的に働き、痛みの神経伝達物質(グルタミン酸など)の放出を遮断する。さらに痛みをもたらす電位(発火)を抑える効果もある。

 こうしたオピオイドの作用が解明されるずっと前、それこそ古代から、あへんが痛みに効くことは知られていた。

 オピオイド(鍵)が、かっちりとはまる受容体(鍵穴)がもともと体内に備わっているのではないか-。1960年代に学者たちの間でそんな予測がなされ、70年代に入ってその受容体の存在が証明された。

 さらに同じ70年代、体内でモルヒネ様物質が産み出されていることも明らかになる。エンケファリン、エンドルフィン、ダイノルフィンと名付けられたそれらの物質は、体内で作られるオピオイドという意味で、内因性オピオイドと呼ばれる。一般には「脳内麻薬」の言葉がなじみ深い。

 もともと生体には、過度の痛みを抑えるために内因性オピオイドを産生する仕組みがあり、それと同じ効果を持つのが自然界にあるあへん成分だった。人類の歴史上では、その〝気づき〟の順序が逆になったことになる。

依存と非依存

 「もともと身体にないものを外部から投与するのではなく、もともと身体の中にあるというイメージ。そう捉えると、モルヒネなどに対する忌避感も少しは和らぐのではないか」

 痛み治療に詳しい三重大医学部の丸山一男教授(ペインクリニック・麻酔学)はそう話す。

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