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「ついに自分の番。生ききりたい」がんで余命数カ月の僧医 緩和ケアに宗教を

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「ついに自分の番。生ききりたい」がんで余命数カ月の僧医 緩和ケアに宗教を

がんの体を押して護摩供養に臨む田中雅博・西明寺住職(手前)=7月5日、栃木県益子町

 「死という苦の緩和ケアにこそ、宗教が役立つ」。そんな信念で寺の境内に診療所を作った僧侶兼医師が、がんに冒された。余命は数カ月。数えきれないがん患者を看取った末に、自分の番がきた。痛みや辛(つら)さが訪れることは知っている。死が怖くないといえば嘘になる。それでも、僧医として活動した経験を後世に伝え、残された人生を仏教徒らしく全うしたい。闘病の日々は続く。(小野木康雄)

■治癒望めず

 真言宗豊山派の西明寺(栃木県益子町)住職、田中雅博さん(69)。境内の普門院診療所(19床)で、がん患者らの治療や緩和ケアに当たる。

 昨年10月の健康診断で、膵(すい)臓(ぞう)がんが見つかった。自覚症状はなかったとはいえ、専門医だけにがんの進行速度は知っている。ただちに摘出手術を受け、約2カ月間入院した。

 手術直後は体の痛みや息苦しさで眠れず、時間の経過が果てしなく長く感じられた。今年6月の検査では肝臓への転移も判明した。

 治癒は望めない。現在は抗がん剤治療を受けているが、期待できる延命は数カ月。長くて年内までの命という。「これが精いっぱいの治療。ついに自分の番が来たということです」

■寺院に医療を

 西明寺で生まれ育ち、前住職だった父の勧めで慈恵医大に進学。研修医時代を含めて13年間、国立がん研究センターで勤務した。

 「死にたくない」「死ぬのが怖い」。担当したがん患者からそんな訴えを聞いても、手術や薬で対応できる問題ではない。宗教者でなく医師として働く自分には、どうすることもできなかった。

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