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【夕焼けエッセー】ヒバリ

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【夕焼けエッセー】
ヒバリ

 「いいもん見せてあげるからおいで」。義父が孫3人を近所の空き地へと誘った。はじめは草むらに黄色い花が3つ、ゆらゆら揺れているかのように見えた。

 が、よく見ると黄色いのは花びらではなく、ひな鳥のくちばし。巣の形に整えられた枯れ草の中に、生まれたてのひな鳥が無心に餌を求めて口を開けていた。それはヒバリの雛で、ヒバリは地面の草むらに巣を作り、ふ化後8日~10日で巣立つらしい。

 その日から、子供より私の方が毎日ハラハラ。雨が降れば「流されないか」、ゴミをあさる鳥に「食べられないか」と、1日何回も見に行く勢いの私に、「あんまり人間が見に行くと親鳥が自分で雛を殺しちゃうらしいよ」と中学生の娘に逆になだめられる始末。

 数回の雨や夜中の野良猫の声を乗り越え、日々成長する雛たち。くちばしも倍の大きさになり、羽の模様もくっきりしてきた9日目。それは突然だった。巣はもぬけの殻。荒らされた様子はなく、自分の意志で出て行ったのは明らか。

 これが本当の「巣立ち」か。なんてあっけない…何の挨拶もなく!(当たり前)。子供に言うと「そうなん?へぇ~」と素っ気ない。子供たちの巣立ちも、こんな風に突然であっけないのかも。

 3羽の雛たちがうちの3人の子と重なって見えて、強く思った。後悔しないよう、子供たちの成長を見逃さないようにしなきゃ。そして私も立派に母親業を巣立てるよう、心の準備をしておかなきゃ!

宮路陶子 44 兵庫県川西市

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