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【スポーツの言葉たち 正木利和】誰かのために走って初めて人は強くなれる 思い出した1枚のはがき

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【スポーツの言葉たち 正木利和】
誰かのために走って初めて人は強くなれる 思い出した1枚のはがき

 「バカなんだからなあ、こいつ…」というときの監督の顔は、言葉とは裏腹にまなじりがいつもさがっていた。そうした情景を、いい師弟関係だな、と思いながらながめていたものである。組織のなかで、彼女はしかられ役という自分の立場をわきまえ、ときにあえておどけたりもしていたように思う。

 93年、2度目のフルマラソンとなる北海道でマラソン初優勝を飾ったあと、しばらく優勝から遠ざかっていたが、96年秋の東京で6大会ぶりに勝つ。

 「監督の笑顔が見たかった」というのは、その際のコメントだ。その夏、アトランタ五輪で金メダルを期待された浅利選手が17位に終わった。その後遺症ともいうべき監督の消沈は、しばらく続いたそうだ。だから、自分がなんとかする、という気持ちで駆けたのだという。誰かのために、と思いながら走ることで人は強くなれるということを教わったのは、彼女からだ。

 実業団を離れたあと、彼女は亀岡市にある母校の南丹高校にもどり、教師になった。それが、この春から京都府庁勤務になるという知らせ。懐かしい話がしたくなるのは、やはりこんなはがきをもらったときだ。

 

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