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【うめきた発】
街の姿変えるアートの力
オーストリア第三の都市、リンツ市。過去30年余りにわたり、先端技術を駆使した芸術表現、メディアアートを中心とした多彩な展開で、工業都市だった街のイメージを大きく変えた欧州の文化首都だ。私もナレッジキャピタルの構想時に出合い、刺激を受けた。
街の起爆剤となったのが、メディアアートに関する世界的な文化機関「アルス・エレクトロニカ」(以下、アルス)だ。コンピューターを使った芸術作品を展示するミュージアムと研究開発を行うラボがある。
1979年以来、毎年9月に国際的なフェスティバルを開催。街のあちこちでコンテスト作品の展示やシンポジウム、パフォーマンスなどが行われる。市民の参加度も高く、銀行のロビーや小学校の教室、教会といった普段はメディアアートと縁のない場所も会場になるのがおもしろい。
フェスティバル期間中、この街は豹(ひょう)変(へん)する。人口約20万人の街に、アーティストやクリエーター、観光客が世界中からやってくる。その数約8万人。たった一つの、しかし、強く継続的な活動体が都市を変える好例といえるだろう。
アルスを牽(けん)引(いん)するのは、芸術監督のゲルフリート・ストッカーさん。彼とは10年来の付き合いになるが、未来を構想する力や社会を変えるアイデアに、いつも感心させられる。