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【知財立国への道~特許制度130年(中)】産業スパイ天国…産業競争力損なう技術流出を食い止めろ

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【知財立国への道~特許制度130年(中)】
産業スパイ天国…産業競争力損なう技術流出を食い止めろ

 「いずれ工場長にしようと思っていたのに…」

 健康食品などの原料を生産・販売するベンチャー企業、バイオジェニック(東京)の渡部政博社長は、産業スパイの被害に遭った経験を苦々しく振りかえる。

 技術を盗んだのは元従業員の中国人男性。中国・昆明市に工場の建設に着手した平成16(2004)年に採用した。真面目で研究熱心、理解するまで質問を繰り返す姿勢を評価し、同社の主力商品、強い抗酸化作用を持つアスタキサンチン(エビやカニなどに含まれる赤橙色の色素)の製造技術をたたき込んだ。ところが一人前になったと思っていた21年、中国人男性が突然退社した。

 「瓜二つの工場がある」-。奇妙な報告を受けたのは翌22年。確認すると、昆明市郊外に外観や製造設備がそっくりのコピー工場があり、アスタキサンチンを生産。しかもバイオ社より安い価格で売っていた。

 さらに調査すると驚愕の事実が判明した。コピー工場の運営会社の経営に、技術の全てを教えた中国人男性が関わっていたのだ。しかも中国人男性らは、バイオ社在籍中に盗んだ製造技術で日本の特許にあたる実用新案を取得していた。

 中国で実用新案を取得すると、技術がホームページで公開されてしまう。このため第三者による別のコピー工場も出現した。バイオ社の年間売上高6億円に対し被害額は十数億円規模といい、渡部社長は「何年もかけて開発した技術が盗まれた。相手は研究開発費が必要ないので安いのは当然だ」と憤る。

      

 バイオ社の事例は、日本企業を標的にした産業スパイ事件の「氷山の一角」にすぎない。経済産業省が25年に発表した企業アンケートによると、調査した国内約3千社のうち14%が過去5年間で「営業秘密が漏洩(ろうえい)した可能性がある」と回答している。

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