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【江戸っ子記者のなにわ放浪記】オウム「国家転覆」に、自衛隊は“幻の秘密作戦”で備えていた 地下鉄サリン20年

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【江戸っ子記者のなにわ放浪記】
オウム「国家転覆」に、自衛隊は“幻の秘密作戦”で備えていた 地下鉄サリン20年

営団地下鉄(現・東京メトロ)日比谷線神谷町駅のホームで救助を待つ地下鉄サリン事件の負傷者ら=平成7年3月20日朝、東京都港区虎ノ門(画像を一部加工、芹沢伸生撮影) 営団地下鉄(現・東京メトロ)日比谷線神谷町駅のホームで救助を待つ地下鉄サリン事件の負傷者ら=平成7年3月20日朝、東京都港区虎ノ門(画像を一部加工、芹沢伸生撮影)

 事件翌日の21日。福山氏のもとに一通の密封した茶封筒が所属する第1師団司令部から届く。表紙には「別命あるまで開封を禁ず」と印刷されていた。福山氏はこれを「幻の作戦計画」と記している。

 「その『幻の作戦計画』の内容は、一言で言えば『第1師団総力による戦闘計画』であった。(中略)万一、警察力がオウムに抗しきれず、警察官や市民に甚大な被害が出た場合に備え、防衛庁長官(当時)直轄の精鋭部隊の空挺団までも待機させるほどの万全の態勢を取っていた。正に自衛隊史上聞いたこともない、事実上の治安出動態勢を取ろうとするものであった」

 オウムは自動小銃1000丁を自主製造しようとしていたことや、旧ソ連製ヘリコプターでの空中からのサリン散布計画、国会襲撃計画なども練り、まさに「国家転覆」を狙っていたことがその後の捜査で明らかになっている。

 「幻の作戦」で想定された“主戦場”は、オウム教団本部があった山梨県の上九一色村と都内の教団施設だった。本書の内容を概要で記す。上九一色村の教団本部に警察が捜索活動に入り武器使用で猛反撃を受けて、警察官多数が死傷した場合は第34連隊、第1戦車大隊、第1特科連隊(いずれも静岡)が対処・支援できる態勢が計画された。

 さらに、オウムのヘリからの反撃があった場合には、第1高射特科大隊が備え、陸自の攻撃ヘリ「コブラ」が“スクランブル発進”できる態勢も計画にあった。また、32連隊内には、屋内での近接戦に備えて、銃剣格闘や空手に優れた隊員を選抜編成し、「遊撃小隊」も編成されていた。

 まさに、戦後初の“開戦前夜”のような状況にあったのだ。同書からさらに紹介する。

 「『幻の作戦計画』は、あくまで最悪の事態に備えたもので、いまだ政府や防衛庁(当時)でオーソライズされたものではなく、現場部隊レベルの『腹案』程度のものではなかったろうか。」

 「地下鉄サリン事件で露呈したように、日本の安全保障・治安維持の制度的な欠陥や政府のリーダーシップの欠如は明らかだった。われわれ自衛隊としては、このような欠陥だらけの安全保障・治安維持制度の中で、市民や警察官がむざむざ殺されるのを手をこまねいて傍観できるはずもないだろう。(中略)かつて、栗栖統幕議長の『超法規』発言に繋がった欠陥だらけの防衛法制は、その後の20年近くたってもほとんど変わっていなかった」

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