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【心に寄り添う、歌う尼さん(3)】
歌と出会った大学時代 友人の姉の死がプロになる契機 シンガー・ソングライターで僧侶、やなせななさん

--能に打ち込んだ中学・高校時代ですが、大学に進学し変化が訪れました
やなせ 高校時代はインターハイを目指すスポーツ選手と同じクラス。私自身も能でプロになりたいと思っていたので、何でも死ぬ気で頑張るのが当たり前やと思っていたんですが、普通の大学生ってそんなことないんですね。バイトをしたり飲みに行ったり、みんなのびのびしている。ある意味衝撃でした。私自身もおしゃれしたり遊んだりするのが楽しいという典型的な大学生になって、能に対して「もういいか」という気持ちになり、離れてしまいました。
--新たな世界が広がった大学時代。歌と出合ったのもこの時期ですか
やなせ サークルや部活動の勧誘の中で、心にとまったのがバンド活動だったんです。はじめは軽い気持ちで軽音楽サークルに入りました。本当に初心者でへたくそで、私がプロになるなんて誰も思っていなかったと思います。けれど卒業する1年前くらいから「音楽ってめっちゃ楽しい」と、能のときみたいにものすごくはまり出しました。バイトをしながら音楽をやっている人など学外の交流も増え、私も卒業と同時に音楽とバイトという道を選びました。
--音楽の楽しさにどっぷりとはまる中、現在の活動にもつながるゴスペルに出合いました
やなせ たくさんの人に会って知っていった音楽の中に、ゴスペルがありました。最初は単純に楽しいなという思いで歌ったり聞いたりしていたのですが、ゴスペルは宗教音楽なので歌のほかに牧師さんの話を聞く時間があったんですね。そのときにふと、私が幼いころからなじんできた仏教と共通点があるな、と気づいたんです。大いなるものにささげる歌というか、みんなで苦しみを分かち合う世界があり、胸が熱くなるのを感じました。お寺や仏教としばらく離れていた時期だったんですが、私の中で仏教の教えと歌がつながるはじめのきっかけになったと思います。
--在学中に僧侶の資格を取得。卒業後はお寺の仕事とバイト、音楽活動を掛け持ちする生活になりました。その中で、プロになるという思いを持つようになったきっかけは