産経WEST

【安本寿久の先人めぐり】大国主命(3)ネズミの恩がえし、求婚…舅の須佐之男命から〝うい奴〟認定

産経WEST 産経WEST

記事詳細

更新

【安本寿久の先人めぐり】
大国主命(3)ネズミの恩がえし、求婚…舅の須佐之男命から〝うい奴〟認定

因幡の白兎神社に立つ兎の像。弱者への目配りが大国主命の魅力だ

 八十神(やそがみ)の憎しみを受けて根の堅州国に逃れた大国主命(おおくにぬしのみこと)は最初、須佐之男命(すさのおのみこと)の娘、スセリビメと出会う。2人は見つめ合い、やがてスセリビメは父の元へ行く。

 「いたく麗しき神来たり

 そう言う娘に須佐之男命は機嫌を悪くする。娘を奪われるかもしれない父親の不快感である。

 須佐之男命は大国主命をまず、毒蛇の洞窟で寝かせた。それで無事だとわかると、ムカデと蜂の洞窟で夜を明かさせた。それでも大国主命が無事だったのは、スセリビメが父の目を盗んで、それらを寄せ付けない呪力のある布を渡していたからである。

 須佐之男命は次なる手段として、大国主命を野原に連れ出した。そこで鏑矢を射て、取ってくるように命じた。大国主命が野原に入るとすかさず火を放った。憎い男を一気に焼き殺そうとしたのだ。

 進退窮まった大国主命の足元に突然、現れたのは鼠(ネズミ)である。

 「内はほらほら、外はすぶすぶ

 入り口は狭いが、内部は広いという言葉は、鼠の住みかがそこにあることを伝えていた。避難した大国主命は窮地を脱した。鼠は鏑矢を探してきて、大国主命の元にくわえて戻って来さえした。大国主命は火が収まるのを待ち、鏑矢を持って須佐之男命の元に帰った。大国主命が死んでしまったと思い、葬儀の道具を持って号泣していたスセリビメが喜んだのは言うまでもない。

 この故事が、「だいこくさま」の絵図には必ず反映されている。米俵と鼠。この2つがだいこくさまとセットになっているのは、古事記にこの神話があるためなのだ。

 では、なぜ鼠は大国主命を助けたのか。筆者はここで、因幡の白兎を思い出す。八十神たちと違って白兎を憐れみ、真実の治療法で救済した大国主命。兎は預言者となって、大国主命をヤカミヒメへの求婚レースで勝たせる。ここに書かれているのは、弱者に目配りを忘れない優しさが、弱者からの支援という思わぬ形で報われる図式である。こうした理想の指導者像が描かれているのが日本の神話の特徴なのだ。

関連トピックス

「産経WEST」のランキング