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【映画作家 河瀬直美の好日便り】人生に「再挑戦」する姿勢

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【映画作家 河瀬直美の好日便り】
人生に「再挑戦」する姿勢

 年末に「断捨離」をした。長年たまっていた資料などを整理し、多くは処分した。そのことを元旦の皆さまへのごあいさつメールに書いたところ、イタリア人のキュレーターから、さっそく返信が来た。

 「2015年の初めに、一番に君のメールを受け取ったよ。不思議なことに、僕も昨年の暮れにモノを整理したんだ。時間というものは常に私たちの周りに存在しているが、それは終わりなき物語でもあるね。まさにネバー・エンディング・ストーリーだ。

 同時に日々や時間は確実に積み重ねられ、僕自身その中に少しずつとけ込んでいくようだ。そして僕に残されている時間も、徐々に少なくなっていることに気づく…」

 彼は、私の「萌の朱雀」をカンヌ国際映画祭のカメラドールに導いた人で、ベネチア国際映画祭のプログラマーを務めたこともある。現在では私が理事長を務める、なら国際映画祭にもプログラマーとしてアジア以外の地域の作品のセレクションに深く関わってもらっている。時折、彼とは言語は違うのに、同じことを考えていると感じることがある。

 彼はスイスのレマン湖近くの映画祭のディレクターをここ数年、務めている。多くの作品が世界から寄せられているのを見るにつけ、特に意識することなく、世界の映画作家たちが本質的な部分で、同じ方向を実は見つめているように感じることがあるそうだ。

 そして今年はすでに選考した作品たちがある種、共通に示していることがあるという。それは、自分の「生」は自身で勝ち得ていくような気概の中で、あたかも自らの人生に再挑戦していくという姿勢が貫かれているところだそうだ。

 彼のメールは、最後にこうくくられていた。「なおみ、すべての物事はいい方向に向かっているね」。年の初めに、心の奥深く感じる思いを共有した出来事だった。

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