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【石野伸子の読み直し浪花女】川端康成の魔界(4)少女を幾人か犯す…「反橋」 夢うつつ行きつつ連作

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【石野伸子の読み直し浪花女】
川端康成の魔界(4)少女を幾人か犯す…「反橋」 夢うつつ行きつつ連作

「住吉」連作の舞台となった反橋。渡るだけで「おはらい」になるという信仰がある=大阪市住吉区の住吉大社(門井聡撮影)

 「反橋」(そりはし)は大阪市住吉区にある住吉大社の橋が舞台となっている短編だ。昭和23(1948)年10月、「手紙」と題して「風雪別冊」に発表された。以後、「しぐれ」(「文芸往来」昭和24年1月)、「住吉」(「個性」昭和24年4月、原題は「住吉物語」)と3カ月ごとに書き継がれ連作の形をとっている。

 「あなたはどこにおいでなのでせうか

 いずれの作品にも、この問いかけ文が、作品の冒頭と文末に置かれている。夢うつつを行き交うような文体で、その後の川端文学の魔界に誘うような独特の世界を作り上げている。

 「反橋」連作、あるいは「住吉」連作と呼ばれる。

 「反橋」は神社正面の池にかけられた大きなアーチ形の橋。太鼓橋とも呼ばれ住吉大社の象徴ともなっている。石づくりの橋脚は豊臣秀吉の側室、淀君が奉納したといわれる由緒ある場所だ。

 ここで、主人公の「私」は5歳のとき母親に手を引かれて橋を渡りつつ、衝撃の事実を告げられる。

 「この橋を渡れたら、いいお話を聞かせてあげるわね

 「どんなお話?

 「大事な大事なお話

 「可哀想なお話?

 「ええ、可哀想な、悲しい悲しいお話

 なんと母は本当の母でなく、私は母の姉の子で、その本当の母はついこの間死んでしまったという話だった。

 「私の生涯はこの時に狂ったのでありました」

 そして、「私」は自分の出生が尋常のものではなかろうと疑い、育ての母へのゆがんだ愛に苦しみ、「悪行」の果て、50代を迎えたいま、死期を迎えもんもんと自分の人生を自問自答している。

 「悪行」とは何か。それが「しぐれ」「住吉」と続く連作の中で切れ切れに明らかにされていく。

育ての母に無理難題を言って困らせ、少女を幾人か犯し…双子の娼婦を相手に…

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