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【阪神大震災20年 未来へのバトン】(2)炎の前の男性、マイクに告げた息子との最後の会話「おやじ、もうええから逃げてくれ」

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【阪神大震災20年 未来へのバトン】
(2)炎の前の男性、マイクに告げた息子との最後の会話「おやじ、もうええから逃げてくれ」

災害時のマニュアルを広げて若手の後輩と話す三上公也さん=神戸市中央区のラジオ関西(頼光和弘撮影)

 阪神大震災の揺れが襲った直後、ラジオから中年男性の悲痛な声が生中継で流れた。

 「息子ががれきの下敷きになって動けない。何度もどけようとしたが、火が上がった。最後に『おやじ、もうええから逃げてくれ』と…」

 兵庫県を拠点にするラジオ関西(神戸市中央区)。記者が中継機材を車に積んでスタジオから飛び出し、たどり着いた神戸市長田区若松町は、辺り一面、家屋が倒壊、すでに炎が燃え広がっていた。

 マイクを向けると、炎の前で呆(ぼう)然(ぜん)と立ちすくむ中年男性は燃える民家を指さし、息子との最後のやりとりを淡々と話し出した。あまりの衝撃に、記者はそれ以上何も問いかけることができなかった。

 同市須磨区にあったスタジオは、番組の生放送中に震災に見舞われた。電源が落ち、電波は停止し、壁が大きく崩れた。

 13分後、自家発電機が稼働。「ハーッ、ハーッ」。女性アナウンサーは呼吸を整えられないままマイクに向かい「スタジオが…ただ今の…地震で壊れております」と告げた。それ以降、コマーシャルなしで連続69時間の特別番組を放送。現場リポート、安否情報、生活情報を送り続けた。

 当時、アナウンサーだった専任局長の三上公也さん(58)は「あの光景は二度と見たくない」と振り返った。長田区の自宅で被災し、妻子の無事を確かめるとすぐ会社に向かった。燃える民家や遺体、けが人…。「この状況を伝えなければ」。携帯電話が普及していない時代、何度も公衆電話に駆け込み、生々しい状況をスタジオに伝えた。

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