産経WEST

【大阪に帰ってきた鴈治郎(4)】江戸歌舞伎との差は「人間くささ」

産経WEST 産経WEST

記事詳細

更新

【大阪に帰ってきた鴈治郎(4)】
江戸歌舞伎との差は「人間くささ」

「関西での帰るところがほしいなあと思ったのも、大阪に家を持ったきっかけ」と話す中村翫雀さん=大阪市中央区の松竹座(南雲都撮影)

 翫雀 上方歌舞伎の二枚目というのは、二枚目の中に三枚目の要素がある。色気とおかしみが同居しているんです。見てて、どっか「あほやなあ」と思われるような男。来年1月に松竹座の襲名披露公演で初役で勤めさせていただく「吉田屋」の伊左衛門や、「河庄」の治兵衛もそうですね。どなたがおっしゃったのか、“江戸の粋(いき)と上方の粋(すい)”という言葉がありますが、それが江戸の歌舞伎十八番「助六(すけろく)」花川戸助六と、治兵衛の差なんですよ。人間くさいから共感していただきやすい。

 --上方歌舞伎と江戸歌舞伎は、同じ演目でも演出に違いがあるものが多いですね

 翫雀 例えば、「仮名手本忠臣蔵・六段目」の勘平。昔、哲明(のりあき)さん(波野哲明=十八代目中村勘三郎の本名)が勘平を演じられた「六段目」に二人侍(ににんざむらい)の役で何度か出演したのですが、哲明さんは江戸のやり方。なんてきっちり決まっているんだろうと驚いたのを覚えています。型とはこういうものなんだと。

 --上方とはどう違うのですか

 翫雀 勘平は、しゅうとを殺してしまったと思い込んで腹を切るのですが、江戸のやり方だと客席を向いて切ります。ところが上方は、家の隅の方で客席に背中を向けてこっそり切る。美青年の悲劇をあくまでも美しく描くのが江戸。上方はもっとリアルで写実的です。でも、私は、上方のリアルなやり方の方が好きなんですよ。勘平の不運な死が一層際立つような気がして。

 --そういうお話をうかがっていますと、上方歌舞伎のおもしろさをもっと多くの方に知っていただきたくなりますよね

(聞き手 亀岡典子)

 この対談は昨年、襲名前に行いました。

「産経WEST」のランキング