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【都市を生きる建築(21)】天を架ける対照の美、昭和の気概 ルポンドシエルビル(大林組旧本店)

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【都市を生きる建築(21)】
天を架ける対照の美、昭和の気概 ルポンドシエルビル(大林組旧本店)

 浪花三大橋のひとつとして知られる天神橋の南詰め、土佐堀川の川辺に面してスクラッチタイルの味わい深い近代建築がある。水都大阪の景観に一役買っているこのビルは、日本を代表する建設会社のひとつである大林組が、1926(昭和元)年に本店として建てたものだ。

 大林組は1892(明治25)年に創業した大阪発祥の建設会社で、近代都市・大阪の建設に大きく貢献した。1925年に中之島に建てられたダイビルの工事を担当した他、今も残る大阪の主だった近代建築には、大林組が手がけたものが少なくない。

 本店の設計に際しては社内でコンペが実施され、当時アメリカで流行していたスパニッシュスタイルが採用された。最上階中央のバルコニーなどにその特徴が見て取れる。またデザインのみならず、アメリカに社員を派遣して建設技術を学ばせ、コンクリートミキサといった最新の機械を導入した。近代国家を建設する企業の気概が込められた建築といえるだろう。

 戦後の高度経済成長期に日本のゼネコンは大きく成長、本店が手狭になった大林組は、1973(昭和48)年に土佐堀通りを挟んだ南側の敷地に、大阪で初めて100メートルを突破した超高層ビルを建設、長らく本店として使ってきた。そして昨年、自ら手がけた中之島のダイビルを建て替え復元した、新生ダイビル本館へ移転し現在に至る。

 一方、スパニッシュの旧本店は、2007年に耐震補強工事を含めた大規模な改修工事を実施、ルポンドシエルという名のフレンチレストランが入居して、ビル名を変えて今も大切に使われている。ルポンドシエルとは「天架ける橋」という意味で、天神橋にちなんだ名だ。

 さる11月の1、2日に開催された「生きた建築ミュージアム フェスティバル」では、3階に併設された大林組の歴史館が特別に休日開館された。多くの人が訪れて大林組の歴史を物語る資料の数々に見入ると共に、スタッフが解説する最新のデジタル技術にも熱心に耳を傾けていた。日進月歩で新しい技術が開発される建設業界だが、歴史的建築を生かす術にもまた、最新技術が活かされている。(高岡伸一/建築家・大阪市立大学特任講師)

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