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【南海トラフ】「逃げなければ生存率はほぼゼロ」「山を向いて逃げればチャンスはある」 住民戸惑いも 「避難困難地域」異例の公表

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【南海トラフ】
「逃げなければ生存率はほぼゼロ」「山を向いて逃げればチャンスはある」 住民戸惑いも 「避難困難地域」異例の公表

避難困難地域でも「あきらめたらあかん」と力を込める姫地区の竹田敏明区長=和歌山県串本町

 南海トラフを震源とする最大地震で、和歌山県は28日、わずか数分で津波が到達する地域などを「避難困難地域」として設定し、踏み込んだ内容の被害想定を発表した。県は「不安を感じる人もいるだろうが、逃げなければ生存率はほぼゼロになる」とするが、高台避難が困難な高齢者が多い地域もあり、現場に突きつけられた課題は重い。

 「悲観的になってもしゃあない。やっぱり取り組んでいかんと」

 津波避難困難地域となった和歌山県串本町姫地区の竹田敏明区長(62)はこう語った。昨年、住民の手で避難路を整備。草木を刈ってブロックを埋め込んだ階段を作り、手すりも設置して海抜26メートルまで逃げられるようになった。

 海に面した集落の住民115世帯のうち、約半数が高齢者だ。県の発表では、津波は最短10分で到達するとされ、最高で約10メートルの高さまで押し寄せる。あきらめを口にする住民も少なくない。

 竹田さんは「山を向いて逃げればチャンスはある」と話す一方、「実際に寝たきりの人をおぶって逃げるのは難しい。自分の命は自分で守るしか…」と表情を曇らせる。県が対策の一つとして挙げた高台移転については「自己資金がいるとなると厳しい。現実的ではない」と話した。

 仁坂吉伸知事は28日、「南海トラフについては、このままでは耐えられないところもあるので、積極的に対策を考えていきたい」と話したが、県の担当者は「単純に避難困難地域を解消しようとすると、街のほとんどが避難タワーになる。それでは街の機能が果たせなくなる」と指摘し、現状、有効な手立ては見当たらない。

 串本町では現在、消防本部や町立病院などを高台に移転し、今後、町役場や幼稚園、小学校なども移すことにしているが、あくまで40~50年先の町づくりを見据えたもの。県の発表を受けて町総務課防災防犯グループの浜地弘貴副課長は「まずは(現状のビルを活用した)避難ビルを増やし、避難困難地域解消に取り組む」とする。

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