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【ニュースの断面】「社員のもの」から「企業のもの」特許法改正の動き…“知財後進”関西中小の意識改革のきっかけに

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【ニュースの断面】
「社員のもの」から「企業のもの」特許法改正の動き…“知財後進”関西中小の意識改革のきっかけに

 特許庁が17日、企業で社員が発明した成果に対する特許権を「社員のもの」から「企業のもの」に変更する特許法改正に向けた基本方針を提示した。社員の発明が企業の利益につながることが明確になり、コスト面から特許取得に二の足を踏んでいた中小企業の特許出願件数の伸びが予想される。特に期待されるのは、知財意識の後進性が指摘される関西中小企業の特許に対する意識向上だ。

 特許庁が調査した平成25年の中小企業の特許出願件数(推計値)は、東京都が約9300件、愛知県は約5800件と他県を引き離しているのに対し関西では最も多い大阪府が約4千件で、兵庫県や京都府は約千件と出遅れている。

 「社員のものになる特許を推奨しづらいのが本音だった」。ある大阪府内の中小企業幹部はこう打ち明けた。別の中小製造業幹部も改正に向け自社技術の特許出願を準備し始めた。「これまで社員から権利を主張されるのが怖かったが、会社の帰属になるなら話は別」と姿勢が一転した。

 ただ、忘れてはならないのは、今後特許権が帰属する企業に社員への報奨が義務づけられることだ。しかし「資金力が乏しい中小が報奨を十分に与えられるのか不安」(知財専門家)との声もある。ノーベル物理学賞を受賞した中村修二・米カリフォルニア大サンタバーバラ校教授が日亜化学工業の社員時代に開発した青色発光ダイオード(LED)関連技術などの報奨金が2万円だったのは有名な話だ。結果的に中村氏は退職後、日亜を提訴した。

 「社員が開発に成功しなくても企業から給料を得ている以上、過度な権利主張には違和感がある」(専門家)との意見もあるが、企業が発明で業績を飛躍させることもあるのは確か。特許権が企業側に移行する方針が決まった今こそ、企業と社員の間の「信頼」が試される。(板東和正)

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