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【人生の楽譜III(5)】悲痛な叫び「子供時代を返して」…子が望まない早期教育は「虐待」と同じ

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【人生の楽譜III(5)】
悲痛な叫び「子供時代を返して」…子が望まない早期教育は「虐待」と同じ

有名私立小学校の入試説明会に参加する親子ら。会場はぎっしりと埋まる。お受験人気は止まらない

 娘を有名幼稚園に入れ、周囲からは「理想の家族」と言われたが、内面は親子とも苦しんでいた。川辺さんは「成長を急ぎ、ありのままの娘を受け止めていなかった」と振り返る。

 一方、心に変調をきたした子供や親の診断、カウンセリングを行っている児童精神科医の渡辺久子医師(66)は、詰め込み教育を受けた子供が、親に対して「子供時代を返して」と詰め寄るような場面にも出くわした。渡辺氏は「子供の脳の発達に必要なのは、楽しい経験。『子供のため』と言いながら、親が子供の望まない早期教育をするのは、虐待と同じだ」と警鐘を鳴らす。

「なぜうちの子は合格じゃなかったの」

 「お母さん、僕はどうして受験なんてしたの。時間の無駄だったじゃないか」

 東京都渋谷区の主婦、谷口直子さん(33)=仮名=は、私立小学校の受験が全て失敗に終わった今年1月頃、長男(6)が漏らした言葉に衝撃を受けた。

 園児のほぼ全員が私立小へ進む有名幼稚園に入れ、幼児教室や体操、バイオリンなどの習い事に毎日通わせた。ほかの親子に取り残されるのが怖かった。穏やかな性格の長男はそつなくこなし、楽しそうだった。

 だが、受験結果が通知された頃、長男が幼稚園で問題を起こした。私立小進学で盛り上がっていた友達に「お前らなんて大したことない」と激高した。「人を攻撃したことのない子だったのに。こんな早く、挫折を経験させてしまった」。谷口さんは落ち込んだ。

 長男は今春、公立小に進んだ。当初は「頭の悪い子が行くところだ」と嫌がったが、今は必死で学校生活になじもうとしている。一方で、志望した私立小の制服姿の子供を見ると、つい避けようとする。中学受験に向け、小1の今から学習塾に通っている。

 わが子の気持ちを思いながら、谷口さんはため息をついた。「なぜうちの子は合格じゃなかったの、どこがいけなかったの、と考えてしまうんです」

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