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【ストーカー論 苦悩する警察(4)】ストーカー放置の「苦い過去」 摘発5年連続トップの兵庫県警 「そこまでやる…」対策の要諦

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【ストーカー論 苦悩する警察(4)】
ストーカー放置の「苦い過去」 摘発5年連続トップの兵庫県警 「そこまでやる…」対策の要諦

兵庫県警のストーカー行為チェック表。警察庁版の原型ともいえる独自のものだ。これをもとに、相談者の安全を電話で定期確認するシステムも全署で導入している

 「元カレにずっと付きまとわれている」

 兵庫県内の警察署。20代の女性が元交際相手の男からのストーカー被害の相談に訪れ、不安を訴えた。平成24年春のことだ。

 担当署員が口頭警告をしても、男は女性の自宅周辺に出没し続けた。

 最初の相談から数カ月後、ついにストーカー規制法に基づき文書警告。男はふて腐れた態度で「はいはい、分かりました」と答え、再び平然と女性宅近くに姿を見せた。

 「もう危ない」。捜査幹部は男の身柄拘束が必要と判断した。この時点で適用できる罪は規制法違反のみ。微罪に近い罰則の軽さにためらいつつも、被害者保護を優先し逮捕へ動く。

 男の行方を調べ上げ、潜伏先のホテルを突き止めた。捜査員約10人が朝から張り込み、ホテルから出てきた男の身柄を確保した。

 「なんであいつの言い分ばかり聞くんや」。怒声を上げる男に容赦なくかけられる手錠。危険なストーカーが被害者から引き離された瞬間だった。

「過ちは繰り返さない」

 ストーカー規制法違反事件の摘発数が21年以降、5年連続で全国トップを誇る兵庫県警。近年、ストーカー対策で全国の警察をリードしてきた背景には、苦い過去がある。

 11年2月、兵庫県太子町で、車を運転していた尾ノ井由加子さん=当時(20)=が、元交際相手の男=同(20)=の車に衝突されて即死。男もその場で自殺した。

 由加子さんは1年以上、男らの執拗(しつよう)なストーカー被害に遭っていた。自宅への押しかけや無言電話。兄の広行さん(58)ら家族は何度も交番に相談した。由加子さんが殴る蹴るの暴行を受け、肋骨(ろっこつ)を折ったこともあった。交番の警察官は男に「二度と付きまとわない」と誓約書を書かせただけで放置した。

 亡くなる約1週間前、家族は骨折した暴行の事件化を強く訴えた。しかし、警察官は管轄の交番に申告するよう告げただけ。当時はストーカー規制法の制定前で、「男女のもめ事」が捜査の対象になることはなかった。

 凶悪犯から国民の命を守る「最後のとりで」であるべき警察の機能不全に、社会は震撼(しんかん)した。

 国会で当時の警察庁長官が「事件処理すべきで、大変残念で遺憾だ」と発言。県警は「過ちは繰り返さない」とストーカー対策の重点化に大きくかじを切った。

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