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【関西の議論】「かの山」「かの川」とはどこか、「♪兎追いし」が日本人の心に響く理由と謎…誕生100年・唱歌「ふるさと」制作秘話

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【関西の議論】
「かの山」「かの川」とはどこか、「♪兎追いし」が日本人の心に響く理由と謎…誕生100年・唱歌「ふるさと」制作秘話

高野辰之の故郷、長野県中野市から望む熊坂山。「ふるさと」の原風景と言われている

 ♪兎追いしかの山、小鮒釣りしかの川…。じんと心に沁み、なぜか涙がこみあげてくる唱歌「ふるさと」。この歌が発表されて今年で100年になる。作詞者の高野辰之の故郷・長野や、作曲者の岡野貞一の故郷・鳥取では、100年にわたって日本人の心に訴えてきた作品の作者を顕彰する動きが広まっている。どうしてこんなにこの曲は私たちの心に響くのか。その秘密を探ると、歌詞とメロディーの魅力以外に、もう一つ、意外な要因があった-。(安田奈緒美)

立身出世の精神性

 「ふるさと」は大正3(1914)年、「尋常小学校唱歌(六)」に発表された。

 「兎追いしかの山」の歌詞ではじまる1番、「如何にいます父母」の2番、そして「こころざしをはたして、いつの日にか帰らん」と高らかに歌う3番。

 今でも小学生だけでなく大人もよく歌う唱歌で、東日本大震災以降は、震災前の故郷を思って、または被災した人たちが復興した故郷に再び帰ることができますように、という願いを重ねて、歌われることも多くなっている。

 「わらべうた・遊びの魅力」などの著書があり、唱歌に詳しい岩井正浩・神戸大学名誉教授は「ふるさと」が今も歌い継がれる理由の1つとして「詞の魅力があるでしょう。誰もが思い浮かべることができる自然を歌い、また、都会で名をなして、故郷に帰りたいというような立身出世の精神性が日本人の感情に合ったのでは」という。

 作詞者の高野は長野師範学校卒業後、同校教諭を務めた後に上京。東京音楽学校の教授を務めた。大正14年には東京大学から博士号を授与されて親戚への報告のために帰郷し、3番の歌詞にあった立身出世を体現した。

強弱のない“3拍子” 日本人的な歌

 岩井名誉教授は音楽的にも「6年生のために作られた曲で、音域も狭く、多くの人にとって歌いやすいのでは」と、ふるさとが長年歌い継がれてきた理由について考える。

 とはいえ、この曲が単純な曲というわけではない。作曲者の岡野によってト長調で書かれたおおらかな旋律について「東京では教会のオルガン奏者でもあった岡野の作ったメロディーは賛美歌的な印象も残す」と指摘する。また、リズムに3拍子を取り入れており「西洋音楽を学んだ岡野らしい作風」と話す。

 ただ現在、この歌を歌うとき三拍子の強拍、弱拍を意識して歌う人は少ない。「日本古来の手まりうたのように一拍一拍に力点を置いて歌うから、日本的な歌に聞こえる」という。西洋音楽の技術を取り入れながら、日本的に歌われる歌が「ふるさと」なのだ。

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