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【経済裏読み】
クイズ王破った人工知能の衝撃…敏腕営業マンが用なしになる時代は来るか

IBMは、将来的には医療、オンラインのヘルプデスク、コールセンターでの顧客サービスなどに幅広く活用できるとしている。
「脳」に迫る
IBMは1997年、当時の最新鋭のコンピューターである「ディープ・ブルー」を擁し、当時のチェスの世界チャンピオンに勝利して、「コンピューターが人間を負かした」とやはり話題をさらった。ワトソンはそのディープ・ブルーの系譜を引きつつ、性能は段違いに進歩している。
ワトソンのすごさは、ウェブ上の百科事典「ウィキペディア」などから集めた約70ギガバイトのテキストデータに裏付けられた膨大な情報量もさることながら、自然な話し言葉を理解し、質問を把握して意図を読み解く「認知力」と「読解力」の高さにある。
たとえば、ワトソンが挑んだクイズ番組では、「米国が外交関係を持たない世界の4カ国のうち、この国は最も北にある」といった問題が出された。ちなみに答えは「北朝鮮」だが、このように少々ひねりが加わったQ&Aでも、ワトソンはつまずかないのだ。
また従来のコンピューターと開発する技術者は、経済や科学など特定の分野のデータベースを拡充することに力点を置く傾向があったが、どんな分野の質問にも答えるワトソンは、専門家からみても「困難な作業に挑戦している」(ITアナリスト)という。
さらに、人間と同じように経験から学習し、情報と情報を関連づけて理論を構築することにも挑んでおり、その点でも人間の脳に近づいているとされる。
群がるIT企業
IBM以外の米IT企業もAI分野に熱い視線を注いでいる。
たとえばグーグルは今年1月、AIの研究開発を行っているディープマインド・テクノロジーズ社の買収を発表した。同社は電子商取引やゲームなどのアプリ向けの汎用学習アルゴリズムを手がけている。2012年には、起業家でAI研究の世界的権威とされるレイ・カーツワイル氏をグーグルに招き入れた。13年5月には、米航空宇宙局(NASA)や大学と共同で量子コンピューターに関する研究所を立ち上げている。
一見、グーグルの本業の検索とは無関係のようだが、ペイジ最高経営責任者(CEO)ら経営首脳は、「検索が究極的に進化すれば脳に近づく」といった趣旨の発言をしている。