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【ビジネスの裏側】急増する「サイバー攻撃」…なのに増えない被害保険加入者、日本企業の事情

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【ビジネスの裏側】
急増する「サイバー攻撃」…なのに増えない被害保険加入者、日本企業の事情

盛り上がる米国市場

 その一方で、サイバー攻撃が横行する米国では、サイバー保険市場も急拡大している。

 損害保険会社のシンクタンク「損保ジャパン日本興亜総合研究所」(東京)などによると、サイバー保険は米国で1990年代後半に登場。ここ数年で急激に市場を拡大しており、現時点で、加入した米企業が支払った総保険料は約10億ドル(約1023億円)と推計される。保険の加入を検討しているのは、大企業やIT企業にとどまらず、中小企業や学校、病院に広がっている。

 米国では昨年12月、大手スーパーチェーン「ターゲット」で、売り上げ記録のデータ管理などに使われる「POS端末」がウイルスに感染。顧客のクレジットカードの暗証番号など約1億1千万件が流出する被害が発生した。米国のセキュリティー専門家は「全米で誰もが知るスーパーマーケットがサイバー攻撃で大損害を受けたことで、どの業界のトップも攻撃を完全に防ぎきれないと悟った」と説明する。

日本では理解されない想定リスク

 日本でも当然、社内システムのウイルス感染による情報漏洩(ろうえい)などの被害が連日のように報道される中、サイバーテロの脅威を感じない経営者はほとんどいない。だが、いざサイバー保険の加入となると二の足を踏む企業が多いのが実情だ。

 「まだ攻撃を受けてもいないのに、なぜ被害を想定した費用をつぎこまないといけないんだ」

 大阪府内の中堅企業で、サイバー保険への加入の必要性を訴えたセキュリティー担当社員が、上司にそう指摘され、加入を断念したという。同社では、すでにサイバー攻撃を防ぐ対策費用に多額の投資に踏み切っており、被害が発生した場合の想定リスクにまで投資する余裕がなかった。

 保険業界関係者は「日本企業は、サイバー攻撃の侵入をゼロにする対策の整備に必死になるあまり、発生した場合に備えた投資に興味を示さない傾向が強いのでは」と分析する。

 ただ、サイバー攻撃の手口が巧妙化する中、企業は常に最悪のケースを想定しておかなければならない状況下に置かれているといえる。顧客の預金や情報の流出など深刻な被害につながりかねないサイバー攻撃には防止策だけでなく、被害を受けた場合の損害を最小限にとどめる対策も万全にしておくことが求められる時代に入っている。

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