産経WEST

【精神科女医のつぶやき】片田珠美(99)佐世保高1女子殺害、惨劇の芽は摘めたのか

産経WEST 産経WEST

記事詳細

更新

【精神科女医のつぶやき】
片田珠美(99)佐世保高1女子殺害、惨劇の芽は摘めたのか

 この少女が入院をすんなり受け入れたとは思えないので、強制的に入院させるしかなかっただろう。現行制度では、強制入院には医療保護入院と措置入院の2種類がある。医療保護入院は保護者の同意を必要とする。措置入院の場合も、金属バットで殴られたという父親が警察に被害届を出したり通報したりすることが必要だった。そのうえで「自傷他害のおそれ」があると診断されてはじめて入院ということになる。いずれにせよ、父親が何らかの決断をする必要があった

 このようにして入院させておけば、今回の惨劇は防げたかもしれない。ただ、この少女の場合、父親への怒りと復讐願望が相当強そうなので、退院後に別の形で攻撃衝動を爆発させる可能性が高いと言わざるを得ない。

 カミュの『異邦人』で描かれているのは、母の死の直後に人を殺した青年である。愛する者の死という対象喪失を受け入れなければならない「喪」の時期に、生と死の間の境界を破壊する行為である殺人が起こりやすいことは過去の事例を振り返れば明らかである。

 この時期に再婚して娘に1人暮らしをさせるという父親の決断は、攻撃衝動の爆発の抑止力になるどころか、真逆に働いたのではないだろうか。

 世間を騒がせたニュースや、日常のふとした出来事にも表れる人の心の動きを、精神科医の片田珠美さんが鋭く分析します。片田さんは昭和36(1961)年、広島県生まれ。大阪大医学部卒、京都大大学院人間・環境学研究科博士課程修了。著書に『無差別殺人の精神分析』(新潮選書)、『一億総うつ社会』(ちくま新書)、『なぜ、「怒る」のをやめられないのか』(光文社新書)、『正義という名の凶器』(ベスト新書)、『他人を攻撃せずにはいられない人』(PHP新書)など。

「産経WEST」のランキング