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【関西の議論】
東京「ジリジリ」大阪「シャッシャッ」東西でセミの鳴き声が異なる理由は…カギは大阪の“乾いて固い土”
クマゼミの“特技”とは
抜け殻調査は、府の中心部ほどクマゼミが圧倒的に多いことを示している。それはなぜか。
大阪のクマゼミの生態について数年前まで、大阪市立大大学院で沼田英治教授(現・京都大教授)とともに研究した産業技術総合研究所(茨城)の研究員、森山実さんは、考えられる理由を2点挙げる。
まず1点は孵化(ふか)の時期だ。
クマゼミの雌は夏に木の枝に卵を産み、翌年夏に幼虫が孵化する。その孵化の時期は、以前は7月下旬~8月初旬で、6月~7月上旬に孵化する他の種類のアブラゼミやツクツクボウシよりも時期が遅い。
ところが、近年のヒートアイランド現象による都市部の局地的な気温上昇で、孵化までのスピードが早まり、特にクマゼミは梅雨の時期とも重なるようになったという。
孵化の際、幼虫は木から落ちて地中にもぐるが、この移動の間、アリなどの天敵に食べられる危険性が高い。逆に雨の日は比較的安全という。そのためクマゼミの孵化が梅雨時期と重なったことで、生存率が高まった可能性が考えられる。
さらに別の理由として森山さんが挙げるのが、クマゼミの幼虫の特技だ。
森山さんらの研究グループは、さまざまな固さの土と4種類のセミの幼虫を使い、幼虫を土にもぐらせる実験をした。
すると、固い土ではアブラゼミなどはなかなか掘り進めなかったが、クマゼミは難なく堀り進んでいったという。
森山さんは「大阪の市街地は気温の上昇や土壌の乾燥によって、クマゼミにとって有利な環境に変わり、近年の独占状況をつくり出したのではないか」と推察する。