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【衝撃事件の核心】妻認知症、長男引きこもり、自らは鬱病の82歳男性が見た“この世の地獄”…泣いて「お父さんとお母さんを助けてくれ」にも無言の長男、無理心中を決意した

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【衝撃事件の核心】
妻認知症、長男引きこもり、自らは鬱病の82歳男性が見た“この世の地獄”…泣いて「お父さんとお母さんを助けてくれ」にも無言の長男、無理心中を決意した

81歳の夫は、認知症を患った73歳の妻の首を絞めた。40代の息子は鬱病で引きこもったまま。自身も心労から鬱病を発症したことで行く末を悲観した結果だった。孤立を防ぐ“救いの手”はなかったのか。殺人罪に問われた夫に対し、裁判所は執行猶予付きの有罪判決を言い渡した

 実は男性には離れた土地に暮らす長女がいた。しかし、男性は長女の嫁ぎ先の家庭を気遣い、「お母さんが認知症になった」と電話で伝えただけで、具体的な相談は一切しなかった。

 長女は事件前日の朝、一人で妻と長男の介護を続ける男性を心配し、実家に電話をかけていた。受話器を取った母親に父親の所在を聞くと、「銀行に行った」と答えた。長女は日曜に銀行に行くことを不審に思いつつ、父親の声を聞かないまま電話を切った。

 実は男性が銀行に向かったのは、妻との心中後に必要な妻と自分の葬儀代や長男の生活費を現金自動預払機(ATM)から引き出すためだった。男性は事件の数日前から、100万円を超える現金を何度も引き出しては、封筒に小分けにしてたんすの中に入れていた。長男あてに預金の在りかや遺産相続などのメモも残していた。

 証人として法廷に立った長女は「もしあの時に父と話をしていれば、事件は起きなかったと思う。悔やんでも悔やみきれない」と嗚咽(おえつ)を漏らした。

 長女によると、もともと隣に男性の弟が住んでいたが、義理の姉が認知症になり、数年前から岡山県で住み込みで介護に当たっているという。長女は「父は認知症を『この世の終わり』と思ったのではないか」とも話した。

ベッドで手を合わせ…

 男性は逮捕後間もなく釈放され、府内の医療施設に入院。現在も鬱病の治療を受けている。しかし、心労からか体重は30キロ台まで落ち、法廷内のわずか数メートルの距離も弁護士の肩を借りなければ自力で歩けなくなった。夢に妻が出てくるといい、ベッドの上で手を合わせながら「すまない」とつぶやき、贖罪(しょくざい)の日々を送っているという。

 公判で弁護側は、男性自身の鬱病が進行し、第三者に助けを求める選択肢が思いつかない状況だったと指摘。男性が妻の症状をかかりつけ医に相談していたにもかかわらず、医療機関がデイケアを勧めなかったことなどにも触れ、「周囲がもう少し男性に寄り添っていれば、悲劇を防げた可能性はある」と強調した。

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