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【衝撃事件の核心】妻認知症、長男引きこもり、自らは鬱病の82歳男性が見た“この世の地獄”…泣いて「お父さんとお母さんを助けてくれ」にも無言の長男、無理心中を決意した

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【衝撃事件の核心】
妻認知症、長男引きこもり、自らは鬱病の82歳男性が見た“この世の地獄”…泣いて「お父さんとお母さんを助けてくれ」にも無言の長男、無理心中を決意した

81歳の夫は、認知症を患った73歳の妻の首を絞めた。40代の息子は鬱病で引きこもったまま。自身も心労から鬱病を発症したことで行く末を悲観した結果だった。孤立を防ぐ“救いの手”はなかったのか。殺人罪に問われた夫に対し、裁判所は執行猶予付きの有罪判決を言い渡した

 男性はやがて「自分が死んだら妻の面倒を見る人がいない。妻を殺して自分も死のう」と決意。3月31日午前、長男に3千円を持たせて買い物に行かせた後、妻と2人きりになった自宅で、テレビを見ていた妻の首を背後から電気コードで締めた。直後に自宅を飛び出し、近くの公園で首や手首を包丁で切って自殺を図ったが、公園関係者に発見され、死にきれなかった。

 5~6月に大阪地裁で開かれた裁判員裁判では弁護側、検察側の双方が、犯行時の男性の精神状態を、判断能力が著しく低下した「心神耗弱状態だった」と主張。地裁も心神耗弱を認め、男性に懲役3年、執行猶予5年(求刑懲役6年)を言い渡した。

無言の長男に絶望

 「老老介護」が悲しい事件に発展するケースは増えているが、男性の事件で特異なのは鬱病の長男まで抱えていたことだ。弁護側は公判で「長男が鬱病でなければ事件は起きなかった」と主張していた。

 男性の長男は中学時代にいじめに遭い、高校入学後に自宅に引きこもるようになった。男性に連れられて自立訓練に通い、23歳の時に就職できたものの、24歳で鬱病と診断された。35歳まで職を転々としたが、現在は無職。精神障害2級の認定を受け、障害年金を受給して暮らしている。

 薬が欠かせず、かつては自殺を図ったこともあった。騒音に敏感で、車のマフラーの音が気になると夜中に家を飛び出すこともあった。そんな長男の世話を、男性は昔から一手に引き受けてきた。車の持ち主に10万円を渡し、マフラーを交換するよう頼み込んだこともあったという。

 男性は妻が認知症と診断された夜、長男の部屋に行き、「お父さんとお母さんを助けてくれ」と泣きながら訴えた。ところが、長男は押し黙ったまま何も答えなかった。男性は傷ついた心を慰めてくれる相手すらいないことに絶望し、誰にも助けを求めないまま、社会から孤立していった。

「この世の終わり」

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