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【杉村一郎の教育漢字考】(30)同じ形だった玉と王の漢字

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【杉村一郎の教育漢字考】
(30)同じ形だった玉と王の漢字

 【玉、おうへん】宝玉や玉石の「玉〔1〕」の金文(きんぶん)や篆文(てんぶん)は「王」、国を治める君主や実力者を指す「王〔1〕」と同じ形だった。

 最も古い漢字の甲骨(こうこつ)文字を見ると、「玉」は3つの宝玉をヒモで通した形にかたどる。「王」は立てかけたオノの象形。意味も成り立ちも全く違う。混同を避けるため、3世紀から7世紀にかけて完成した楷書で、「王=たま」に目印の「丶」を加えて「玉」とし、「王」と区別した。

 【玉】が偏だと【おうへん】になるが、「王」とは関係ない。「玉」の変形だ。「班〔6〕」は「玉」を「刀=りっとう」で2つに切った形で、分け与える意。配るときは順番や序列にのっとることから、グループ編成の「班」と用いる。2つに分けるのは「割り符」の意味合いがあるよう。

 「玉に傷」は間違い

 「球〔3〕」は「求」が音符の「形声」。美しい玉が本来の意味だが、現代ではボールなどの球体を指す。「出現」「表現」など隠れていたものが表面に出てくる意の「現〔5〕」も「見」が音符の「形声」。古くは「見」の字を「見る」「現れる」の両方の意で使ったが、「おうへん」を置いた漢字を作り、使い分けた。

 「理〔2〕」の「里」は、宝玉を表面の筋に添って細工すること。転じて筋道の「道理」「論理」▽自然科学の「物理」「理科」▽ただす、整えるの「整理」「料理」▽分かる、悟るの「理解」と幅広い意味で用いられるようになった。

 「玉」の「丶」の位置がもう一段上にある漢字がある。「丶」は傷を指し、価値の低い傷が付いた玉を表すのだ、という。しかし、「玉」の異体字との見方もある。もしかしたら、「王」から「玉」への“移行期”の誤字が残ったのかもしれない-。

 ちなみに「玉に瑕(きず)」は、漢語の「玉瑕(ぎょっか)」が語源なので「玉に傷」と書くのは間違い。新聞では「きず」とかな書きする。

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