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唐招提寺の小院が80年ぶり里帰り

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唐招提寺の小院が80年ぶり里帰り

 世界遺産にも登録されている唐招提寺(奈良市)の境内に昭和9年まで存在し、同県曽爾(そに)村に移転していた小院「法華(ほっけ)院」が、今秋をめどに元の境内に戻される。院の建物は移転後に取り壊されており、寺の境内にある茶室を本堂として受け入れる方針。新たに本尊とする掛け軸装も作製中で、約80年ぶりの“里帰り”に関係者は「本来の場所に戻るのは意義深い」と歓迎している。

 院は永禄2(1559)~慶長13(1608)年、寺の境内に創設された。

 文献などによると、昭和9年、当時の曽爾村長が寺の長老に依頼し、寺を総本山とする律宗(りっしゅう)の布教のため、村内の今井地区に移転された。僧侶も現地に派遣され、信徒約180人と一緒に院を盛り立てたという。

 しかし、太平洋戦争などを経て荒廃が進み、寺宝の十一面観音立像(重文)などは寺に返還されたが、無人となった本堂は昭和27年、建物本体が解体され、宗教法人格を残したまま廃寺となった。

 平成9年、法華院の住職に就任した石田太一・唐招提寺執事(46)が本来の姿に戻そうと決意。県内の宗教法人を管轄する県の担当者と相談して移転の手続きを進めた。律宗の宗派了承も得て、今秋をめどに帰還させる段取りを整えた。

 寺の境内に元来あった場所は現在、森林となっていて建物を建てることができないため、代わりに境内の茶室「萩の席」を本堂にあてる方針。

 本尊の釈迦如来座像は戦後、行方不明となったため、本尊として新たな掛け軸装も発注している。

 石田住職は「本来あった境内に戻ることで、幻だった寺に再び血が通い、途絶えた活動が再開できる。(本堂の茶室で)茶道などを通して布教に努めたい」としている。

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