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【戸津井康之の銀幕裏の声】現役パイロットは「宮部久蔵」をどう見たか…「生還は義務だ」、語り継ぐ『永遠の0』

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【戸津井康之の銀幕裏の声】
現役パイロットは「宮部久蔵」をどう見たか…「生還は義務だ」、語り継ぐ『永遠の0』

 「ゼロ戦乗りの日本の撃墜王、坂井三郎氏も『攻撃の瞬間こそ、自分の背後を確認した』と書いています。同じくゼロ戦搭乗員、笠井智一さんも『斜め後方を一番見ていた』と言われていますね。現代戦では、レーダーの発達で遠方からの発見は容易になりましたが、目視がより重要となる近距離戦では、その高速性、機動性から、かえって見失うことも多くなりました。『Lose sight, Lose fight(見失うこと=負けること)』という点では宮部の頃と変わっていません。ステルス機にレーダーは通用しませんから、なおさら重要とも言えます」

「生きて捕虜の辱めを…」のナンセンス

 また、宮部が出撃の度に「生還して家族の元へ帰りたい」と話すことに対し、同僚らは「パイロットの風上にもおけない」と軽蔑するが、菊地さんはこう否定する。

 「現代のパイロットは生還が義務とされています。ヒューマニズムからではなく、パイロットも貴重かつ高価な兵器の一部だからです。空自の戦闘機乗りの養成には、3年近い教育期間と約5億円の費用が必要ですし、熟練と呼ばれるレベルに達するにはさらに数年を要しますから」

 宮部と帰還中、故障した僚機が、基地へ帰ることをあきらめ、特攻を志願する場面がある。宮部は部下の願いを許さず、ともに帰還する場面が描かれる。

 菊地さんは「現代のパイロットにはサバイバル訓練も義務づけられています。生きて戻れば撃墜された原因(戦訓)が分析でき、その後の戦いを有利にできます。『生きて虜囚の辱めを…』と言った戦陣訓のために日本が多くのパイロットを失い、戦局に影響を与えたことは否めない事実です」と宮部の判断の正当性を説明する。

過酷、防寒具も耐Gスーツもなしで…

 当時、ゼロ戦は旋回能力や航続距離の長さなどで他国の戦闘機の能力を圧倒的に上回っていた。だが、そのためにパイロットは肉体的、精神的な負担を強いられたともいわれている。宮部を演じる岡田さんらが疲労困憊(ひろうこんぱい)しながらゼロ戦を操縦し、基地へたどり着くシーンは印象的だ。

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