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【関西の議論】96年前、日本初「第九」演奏会の〝意外な史実〟…ドイツ兵捕虜と日本人の友好で生まれた「収容所第九コンサート」

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【関西の議論】
96年前、日本初「第九」演奏会の〝意外な史実〟…ドイツ兵捕虜と日本人の友好で生まれた「収容所第九コンサート」

 住民、市民引きつけた演奏

 楽団は翌日、外出して徳島市の宿泊施設でも音楽会を開催。また約1年半の間に収容所内で50回も演奏会を開いた。「第九」の演奏は1回だけだったようだが、周辺住民や徳島市民の中には西洋音楽に興味を持ち、楽器を演奏したいと考える人も現れたという。

 ドイツ館が新たに収集した資料の中には、初演奏の際に独唱した4人のうちの1人で、ヘルマン・ヴェーゲナーという名の捕虜の写真もあった。演奏会のプログラムに名前が記されており、独唱ではトップのソプラノを担当したとみられる。

 写真は、ヴェーゲナーが板東俘虜収容所に移送される前にいた愛媛・松山の収容所で撮られたもので、兵舎の部屋でくつろぐ様子がうかがえる。エルンスト・フィンドルフという別の捕虜の親族が保存していたアルバムの中にあった1枚で、机の上部に掲示した名札などから人物が特定できたという。

 フィンドルフが残した資料には、アメリカの知人女性からトマトの種などを入手したというメモ書きもあった。また、捕虜が夜遊びに出て朝に収容所に戻るという「脱柵」をしていたことを書いた手記も見つかり、「脱走」ではないユニークな行動の記録として関係者を驚かせた。

 ヴェーゲナーの写真につて、ドイツ館長で元徳島大教授の川上三郎さんは「捕虜の名前は名簿で残されているが、その容姿はあまり特定できていない。写真の人物が『第九』演奏に参加したメンバーだったという点で今回の発見はとても貴重だ」と話す。

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